台北市のゲイバー「Commander D」が警察の家宅捜索を受け、客51人とオーナーが拘束された事件で、100人を超える性的少数者らが万華分局前に集まり抗議デモを行った。アジア初の同性婚容認地域として知られる台湾において、プライド月間を控えた異例の警察行動に強い不満と不安の声が上がっている。
万華区のゲイバー「Commander D」への家宅捜索と51人の拘束
台湾・台北市万華区で14年間にわたり営業を続けている知名度の高いゲイバー「Commander D」が、10月3日の午後に警察の突然の家宅捜索を受けた。現場には多くの客がおり、服を脱いでいた状態の顧客を含む51人が警察に連行されて取り調べを受けたほか、バーのオーナーが逮捕された。
台北市警察局万華分局の報道担当者である陳育誠氏によると、警察は裁判所が発行した令状に基づき、風俗道徳に反する罪の疑いで捜索を実施したという。拘束された人々は、公衆の面前や出入り可能な場所で不自然な露出やみだらなポーズをとることを禁じる法律に違反した疑いが持たれている。

プライド月間の抗議デモと当事者団体による調査要求
抗議参加者の康揚はIndependent紙などに対し、「こんなの受け入れられないよ」と語った。
また、台湾社会がアジアで最初に同性婚を法制化した2019年以降、性的少数者の権利擁護の先進地としてのイメージを築いてきただけに、月末に東アジア最大級の台湾プライドパレードを控えたこの時期の摘発には大きな波紋が広がっている。台湾は1987年まで戒厳令下にあり、同性間の関係がタブー視されていた歴史的背景を持つため、今回の事態は人権保障のあり方について新たな問いを突きつけている。
台北市と警察当局の対応および未解決の行政処分
抗議を受けて分局の責任者が署の外に出て対応し、「私たちは多元的社会の文化を尊重し、すべての市民の権利を守ります」と述べたものの、集まった群衆からは野次と不満の声が上がった。この責任者は実名を名乗らなかった。
台北市の蒋万安市長は、今回の家宅捜索が裁判所の令状に基づく合法的執行であったとの認識を示しつつ、万華分局に対して不適切な行為がなかったか再点検し、速やかに状況を公表するよう指示した。万華分局は当初、すべての警察官が法に則って行動したと主張していたが、その後の監視カメラの映像確認によって、障がい者に対する不適切な言動が確認された警察官については行政上の懲戒手続きを進めていると発表している。
今回の摘発の背景には、市議が未成年者の入店や不適切な活動に関する懸念を提起し、蒋市長が調査を指示した経緯が存在する。しかし、店舗側は年齢確認の仕組みを徹底しており、顧客間の親密なやりとりはプライベートな行為であると主張して疑惑を否定している。未成年者の立ち入り問題と風俗道徳違反の摘発がどのように結びついたのか、また家宅捜索時の強制的な手続きをめぐる法的な適正手続の遵守については、依然として市民団体と当局の間で大きな意見の隔たりが残されている。