スペインの少数左翼連合政権は、保守派や国粋主義政党が議会で2件の住宅緊急令を否決した事を受け、早ければ11月にも解散・総選挙に踏み切る可能性が浮上している。87歳の高齢女性が自宅を追い出された一件を契機に、全国約50都市で週末の抗議デモが爆発的に広がった。
マドリードでの立ち退き劇と全国的な抗議運動の広がり
スペイン全土で数万人が街頭に繰り出し、住宅危機への政治的行動を要求する大規模な抗議活動が行われた。政府発表によるとマドリードのデモには約7万人が参加し、約50都市でも同様の集会が開催された。ロイターなどの報道によれば、一部の参加者はゼネストを求めるプラカードを掲げた。
国際的な投資ファンドが彼女の建物買収後に賃料を大幅に引き上げたことで立ち退きに追い込まれ、車いす生活を送るマリア・デル・カルメン・アバスカルさんが担架で病院へと搬送される映像が拡散した。ヨーロッパ20カ国以上から集まった約200人の住宅活動家がプエルタ・デル・ソル広場でテント村を形成し、世界的なシンボルとなったこの事件に抗議の声を上げた。英ロンドンから駆けつけたロンドン・レンタマーズ・ユニオンのメンバーであるナズ・フォーゲル(29)は、警官隊がマリアを stretcher(担架)に乗せて病院へ連れ出すソーシャルメディア上の画像を見て、イングランドの首都で自身が止めようとした71歳女性の立ち退き事件を思い出したと語り、ポルトガル・リスボンの借受人組合に所属する弁護士テレサ・マメデ(31)も怒りを組織化しチャネルする必要があると訴えた。マドリードのテナント組合のスポークスパーソンであるサビナ・カラウは、水曜日の出来事はマリアだけでなく多くの人々にとって長年蓄積されてきた問題の結果であると指摘している。また、マドリードのプラザ・オブ・シベレスに集結したデモについて、主催者側は50万人と発表した一方、政府代表は7万人と発表している。
スペイン議会による緊急法案の否決と政局の動揺
採決に先立ち、サンチェス首相は議員らに対して政治的計算を脇に置くよう訴えていた。

「一般市民のこと、そして公共機関の保護を最も必要としている人たちのことを考えてほしい。親元から離れて暮らす余裕のない何百万もの若者たちのことを考えてほしい」とペドロ・サンチェス首相はAl Jazeeraおよびタイムズ・オブ・インディアに対し、そして「もし正しいことをしなければ、歴史があなたたちを裁くだろう」と述べた。
また、保健相のモニカ・ガルシアは自身のX(旧ツイッター)で、右派政党が労働する大多数から少数が利益をむしり取る封建経済に投票したと強く批判した。他方、バルセロナ大学社会学部のマルタ・ソレル・ガジャルト教授は、アルジャジーラの取材に対し、これら2つの法令はいずれも中長期的な住宅問題の解決にはなっていないと指摘していた。
賃貸市場の急騰とEU平均を大きく下回る公営住宅の現状
アイデリアスタなどの不動産ウェブサイトのデータによると、スペインの家賃は過去10年間でほぼ倍増し、1平方メートルあたりの平均価格は2016年の8.20ユーロから本年は15.10ユーロへと上昇している。アイリッシュ・タイムズの報道では、スペイン国内の賃貸料は過去10年で80%上昇し、住宅価格も63%上昇したとされる。さらに、スペイン青年評議会によれば、今年初めの時点で国内の平均家賃は月額1,176ユーロに達し、これは30歳未満の平均給与の98.7%に相当する額となっている。
政府の発表では、賃貸住宅に住む人々の26%が収入と光熱費の40%以上を家賃に費やしており、これは欧州連合(EU)の平均である18%を大きく上回っている。さらに、経済協力開発機構(OECD)加盟国の中でも、スペインの政府所有による公営賃貸住宅の割合は全体の2%未満にとどまっており、EU平均の8%を大きく下回る水準となっている。