南アフリカ共和国で女性の遺体が相次いで発見され、治安悪化への懸念が高まる中、シリル・ラマポーザ大統領は2026年9月29日の国民向け演説で、女性や子どもが被害に遭った未解決事件の全件調査と捜査再開を警察と検察に指示したと、メール・アンド・ガーディアンなどの現地メディアが伝えた。
女性殺害の急増と相次ぐ未解決事件の現状
南アフリカの最大都市ヨハネスブルクに隣接するエクルレニでは、直近の2カ月間で女性の遺体が相次いで見つかり、連続殺人への恐怖が広がっているとBBCニュースが報じた。7月末から8月初めにかけて半径7キロ以内で女性3人の遺体が見つかったのに続き、先月初めにはわずか10日間で6人の遺体が発見された。さらに先月26日から27日にかけても2人の遺体が見つかり、確認された犠牲者は少なくとも11人に達している。警察の調べでは、犠牲者は全員が20代または30代の女性であり、多くは全裸や衣服を脱がされた状態で主要道路近くの空き地に遺棄され、暴行を受けた痕跡もあった。

大統領による緊急対策と警察の捜査状況
シリル・ラマポーザ大統領は国民向け演説の中で、政府のこれまでのジェンダーに基づく暴力への対応は「十分ではなかった」と認め、警察と検察に対し、女性や子どもが被害に遭った殺人や性的暴行に関する未解決事件を60日以内に全件調査するよう命じた。さらに90日以内に各事件の優先順位を定めて捜査再開計画を策定し、人員増強や装備充実のための財政支援計画も60日以内にまとめるよう求めている。BBCニュースによると、一連の事件に関連して3件で容疑者4人が逮捕され、ほかの事件でも警察が一部の容疑者を特定したとされるが、警察は同一犯または同一グループによる犯行を示す決定的な証拠はまだ確保できていない。
地方自治体による実態調査と酒類規制の強化
全国の地方政府に対しては、女性の安全に関する実態調査が指示された。Yahoo!ニュース(AP通信)によると、この安全監査には街灯が故障している場所、放置された建物、防犯対策が手薄な公園や墓地などの危険な場所を特定することが含まれており、60日以内の完了が予定されている。また、ラマポーザ大統領は、有害な飲酒が対人暴力を悪化させる大きな要因であるとして、無許可の酒類販売店の取り締まりなど酒類関連法の執行強化も求めた。
市民による抗議デモと治安全般の課題
南アフリカのダーバンでは9月30日、ジェンダーに基づく暴力に抗議する大規模なデモ行進が行われたとYahoo!ニュース(AP通信)が伝えた。デモの指導者を務めたジャシンタ・ンゴベセ=ズマは、政府にはフェミサイドの危機に対する有効な解決策がなく、口先だけの議論に聞こえると批判した。現地警察の統計によると、今年4月から6月までの3カ月間に発生した殺人事件は計5427件に上り、1日平均で約60人が殺害されて世界最高水準の殺人率を記録している。しかし、その中で解決される事件は10件に1件程度にとどまっている。