ロシア・シベリア地域でヒグマの出没が相次ぎ、ポドテソヴォ村ではキノコ狩り中の女性らが命を落とした悲劇が起きたほか、政府データによると温暖化や餌不足を背景に住民らが不安な生活を余儀なくされている。.
ポドテソヴォ村でのヒグマ出没と住民の恐怖
シベリアのタイガに隣接する人口約3,500人のポドテソヴォ村では、ヒグマの相次ぐ目撃情報により、住民らが厳しい日常を送っている。エニセイ川の右岸に位置するこの集落では、かつてないほどの数で野生動物が人里に姿を現している。
地元の妊娠中の女性であるワレリヤ・エフレモワさんは、子どもがリラックスしている地元の遊び場にまでクマが侵入してきたと語る。彼女はワレリヤ・エフレモワさんは「クマが森から出始めたとき、私たちは公園も含めて、できるだけ外出を控えました。子どもたちが遊ぶ公園にまでクマが来ていたので、本当に怖かったのです。暗くなってからの外出は絶対にあり得ませんでした」と述べた。現在でも目撃数は減少傾向にあるとされているものの、住民らは依然として周囲に警戒しながら歩いているという。
別の住民であるニコライ・ジリンスキーさんは、寒くなってクマが冬眠に入る時期を待っているものの、冬眠期間中であっても住民の不安が消えることはないと指摘する。彼は、すべてのクマが無事に冬眠するか確信が持てず、数が多すぎて空腹であると懸念を示し、ボートでの釣り中にも襲われるのではないかと恐れている。
相次ぐ人身事故とハンターによる駆除の開始
エニセイ川沿いのタイガでは、悲劇的な被害が住民の生活を暗転させた。8月31日には、地元の年金受給者であるゾヤ・グバノワさん(67)が、ロシアで広く親しまれているキノコ狩りの最中にヒグマに襲われて命を落とした。墓地には木製の十字架とカラー写真が掲げられている。
住民のユリア・マルコワさんは、過去2ヶ月にわたり恐怖の中で生活しており、夕方の散歩すらできない状況だと語る。彼女は、クマがただの可愛いぬいぐるみではなく危険な野生動物であることを当初住民が十分に理解していなかったと述べつつ、度重なる侵入により住民の心情が変わったことを明かした。
こうした状況を受け、ミハイル・コンダコフ氏をはじめとするハンターらは、ポドテソヴォ村の住民からの要請に応じる形で、ヒグマの駆除に乗り出した。シベリアのタイガでハンターらが追跡を行い、発砲によってクマを仕留める事態となっている。ミハイル・コンダコフ氏はロイターに対し、「集落のクマをめぐる状況は現在、非常に厳しいものになっています。クマが直接集落に入り込むことが増えています。今年は悲劇が起きました。キノコ狩りに行った女性2人が人食いグマに殺害されたのです。クマがあまりにも多いため、私たちはクマの駆除を開始することを決めました」と説明した。
全国的な個体数急増と専門家が指摘する背景
ポドテソヴォ村での深刻な事態は、ロシア全国規模で直面している問題の一幕に過ぎない。国営メディアによると、今春以降のヒグマによる死者は少なくとも22人に達しており、政府は先月、一部の地域で制御不能に陥った個体数を管理するための緊急対策の立案に着手した。
政府データによれば、過去30年間でヒグマの個体数は倍増し、30万8,000頭に達している。この急増の一因には、より短く温暖化した冬があるとされている。さらに、現地の専門家は、乾燥した早い春の影響でクマの主食となるベリー類が不足し、餌を求めて行動範囲を広げざるを得なくなったと分析している。また、放置された食品廃棄物が動物を引き寄せたことや、安全規則が無視されてきたことも一因として挙げられている。
特に約2万7,000頭のクマが生息するクラスヤルスク地方では、当局の対応を巡る法的責任も問われている。先月、捜査当局は同地方の環境省がクマの数を適切に管理しなかったとして刑事事件の捜査を開始した。発表では、行政側の過失が9月単月だけで7人の死者を出した原因であると指摘されている。
住民の生活様式の変化と今後の懸念
暗くなってからの集落の様子は一変している。ウラジーミル・ヴァギンさんは、自身の庭にあるラズベリーの茂みの近くでクマの痕跡とみられる足跡を発見し、自宅の庭ですら襲われる恐怖があると語る。夜間に車で集落内を移動した際にも、住民らが恐怖から外出を控えているため、街路が完全に空洞化している様子を確認した。
気候の変動や冬眠の動向が不透明な中、住民らは依然として高い緊張感を強いられている。森林から人里へと活動域を広げた野生動物との共生は、安全対策や個体数管理のあり方をめぐり、地域社会に重い課題を突きつけている。