タイ・パタヤでスーツケースから遺体で見つかった17歳の少女殺害事件をめぐり、殺人罪などに問われているオーストラリア国籍の被告が12日、パタヤ地方裁判所に出頭した。遺族と初めて対面した法廷で、被告は死体遺棄罪について起訴内容を認める意向を示した一方、殺害については無罪を主張した。
パタヤ地方裁判所での初対面と罪状認否
2026年10月12日、タイ南部の観光都市パタヤにあるパタヤ地方裁判所で、サイモン・ピーター・カーマン被告が出頭し、事件後初めて被害者遺族と直接対面した。被告はブラウンの服を着て、手首と足首に枷をつけられた状態で裁判所に連行された。 シドニー・モーニング・ヘラルド紙などの報道によると、事件で亡くなったのは17歳の少女で、親しい人々からは「ケーキ」の愛称で呼ばれていたタンチャノック・ドンホムラさんである。
事件が起きたのは、タイの首都バンコクから南東へ約93マイル離れた観光やセックス産業で知られるパタヤ市内のアパートであった。被告の弁護を担当するソラシット・ポンイン弁護士はABCニュースに対し、被告の母親によって依頼を受けたと語っている。
検察側はカーマン被告に対し、意図的な殺人、未成年者に対するわいせつ行為に関する2つの罪、そして死体の隠蔽という合計4つの罪で起訴している。裁判官は審理の中で、死体遺棄に関する証拠が強力であることを指摘し、同罪について罪を認めるよう被告に助言した。これに対し、被告は死体遺棄の罪については罪を認める意向を示したが、殺人罪などの他の容疑については無罪を主張し続けた。
被告が主張する正当防衛と遺族の激しい反発
裁判の中でカーマン被告は、被害者の少女がナイフを突きつけてきたため身を防ぐ必要があったと主張し、首ではなく顎を絞めたものの少女が死亡したとして正当防衛を訴えた。被告は、この世を去った少女が自身の死に責任があると主張している。また、保釈を却下された際には「これに値するようなことは何もしていない」と述べている。
しかし、被害者の父親であるトンチャイ・ドンホムラさんは、北東部のカラシン省にあるバーンボという町から約600キロメートル移動して裁判所に出頭し、被告の主張を強く否定している。インデペンデント紙の取材に対し、父親は遺体の状態について言及し、正当防衛であれば歯が折れたり顔が激しく傷つけられたりするはずがないと怒りをあらわにした。また、被害者の叔母であるミルントリー・タナチャイさんも、被告が殺人罪について争う姿勢を見せていることに関して、厳罰を望む遺族の思いを代弁している。
「家族は裁判所に死刑判決を下してほしいと願っています。大切な家族のメンバーを失ったからです。二度とこのようなことが起きないよう、私たちは処刑を望んでいます。誰もこのような痛みに耐えることはできません。」
ミルントリー・タナチャイ(被害者の叔母), インデペンデント紙
事件の経緯とタイ警察の捜査結果
事件が発覚したのは2026年6月下旬である。ニューヨーク・ポスト紙などが伝える警察の発表によると、タンチャノックさんは6月25日の未明にパタヤ市内のコンドミニアムへカーマン被告と一緒に手をつないで入っていく姿が防犯カメラに捉えられていた。その後、被告が大きなスーツケースをひとりで運び出し、バイクに括り付けて走り去る姿が確認されており、彼女の遺体は捨てられたスーツケースの中から鉄道線路脇の草むらで発見された。
パタヤ警察署のアネク・スラトンヨー警察大佐によると、警察の解剖の結果、少女は窒息および内部の脳損傷により死亡したことが判明している。遺族は、少女がセックスワーカーではなく、友人や海を見るために休暇でパタヤを訪れていたと述べている。
カーマン被告はオーストラリアへ帰国するためバンコクの主要空港に向かっていたところを警察に身柄を拘束された。オスカルーサ・ヘラルド紙によると、タイの法律では計画的殺人の罪で有罪となった場合、死刑判決が下される可能性がある。
遺族による民事訴訟と今後の裁判スケジュール
刑事裁判の進行と並行して、被害者遺族は法的支援を受けて民事上の賠償請求にも動いている。パタヤの権利保護・法律援助オフィスの支援のもと、遺族はタイ刑事訴訟法に基づきカーマン被告に対して損害賠償を求める申し立てを行った。パタヤ・メール紙の報道では、民事訴訟における賠償請求額として約49,000ドルから70,000ドル(約165万バーツ)規模が求められていることが示されている。
パタヤ地方裁判所は今後の公判日程を正式に決定しており、刑事裁判の証人尋問などは12月8日、9日、11日に予定されている。バスティーユ・ポスト紙の報道によると、検察側は10人の証人を予定しながらも7人に出頭を要請する方針であり、被告側では被告本人のみが証言を行う予定である。