マリーナ・ベイ・ストリート・サーキットで行われた2026年シンガポール・グランプリは、スクーデリア・フェラーリにとって表彰台の複数獲得の可能性を秘めながらも、思わぬ戦略のボタンの掛け違いによって苦い結末を迎えることとなりました。
フレデリック・バスールが明かしたフェラーリのピット指示とハミルトンの独断
フェラーリのチーム代表であるフレデリック・バスールは、レース後のメディア対応で、戦略上の混乱がエンジニアリングデスク側のミスではなく、コクピット内での独自の判断によるものだったと明らかにしました。チームはハミルトンに対してピットインを明確に指示したものの、本人がボックスに入らなかったと説明しています。

ルイス・ハミルトンはBBCの報道に対し、「バーチャル・セーフティカーの下でチームからピットインを指示されたが、エントリーを通り過ぎてしまった。その後、そのままコースにとどまって最後まで順位を維持しようと決めたが、終盤はタイヤの摩耗にひどく苦しみ、3つ順位を落として6位でフィニッシュした。これは今日のマシンのペースを反映したものではない」と述べました。
バーチャル・セーフティカー(VSC)が導入された際、通常であればレース中のピットストップに比べておよそ10秒の時間を節約できる絶好の機会となります。チームは2台揃ってのピットインを命じ、シャルル・ルクレールはこれに従ってソフトタイヤへと交換し2位表彰台を死守しましたが、ハミルトンはピットエントリーを通過しコースにとどまる決断を下しました。
レース中盤のVSCとタイヤ戦略の誤算が招いた順位低下
レース序盤、フェラーリはマックス・フェルスタッペンを攻略すべく戦略を二分し、ハミルトンは第1スティントを長く引っ張るために新品のミディアムタイヤを選択してスタートしていました。しかし、このミディアムタイヤはソフトタイヤと比較してパフォーマンスやデグラデーションの面で劣ることが判明し、ハミルトンは苦しい序盤戦を強いられることになりました。

バスール代表は、ミディアムタイヤがソフトタイヤに比べてパフォーマンスで劣っていた点を指摘しつつ、「タイヤの利点は、6周遅くピットインしたシャルルにあった」と述べています。ハミルトンはその後、メルセデスのルーキーであるキミ・アントネッリやマクラーレンのランド・ノリス、オスカー・ピアストリにかわされ、6位でチェッカーフラッグを受けました。
スカイスポーツの解説陣の間で分かれたチームとドライバーの信頼関係を巡る議論
この一件を受け、スカイスポーツF1の解説陣の間では、チームとベテラン王者の間の信頼関係に関する議論が巻き起こりました。パンドラのナオミ・シッフは、前週のマレーシアGPにおけるタイヤ選択の混乱なども引き合いに出し、双方が正しい決断を下せるかという点で信頼を揺るぎなく失っているのではないかと指摘しました。
一方で、2009年のワールドチャンピオンであるジェンソン・バトンはこれに反論し、ハミルトンが自身の判断でレースを進めたかっただけであり、チームメイトの後ろでレースを終えることを望まなかったのだと分析しました。「彼は自分のコールを試したかったのだろう。ソフトタイヤでのペースに自信があったはずだ」とバトンは述べています。
次戦アメリカGPに向けたフェラーリの課題と順位への影響
レース後、過酷なコンディションの中で体調不良を訴えたハミルトンは、FIAの医療チームによるチェックを受けた後、メディア対応の免除を受けてサーキットを後にしました。のちに発表された声明の中で、自身の判断ミスを全面的に認めつつ、チームが週末に向けて注いでくれた多大な努力に対して謝罪の意を示しています。

Formula 1は今後、アメリカ大陸でのトリプルヘッダーに突入し、10月23日から25日にかけてテキサス州オースティンでアメリカグランプリが開催される予定となっています。