2026年8月11日、リンジー・クランシーの殺害裁判で証言が続けられ、精神科の医療従事者らが法廷に立ちました。被告側は極度の産後精神障害を主張していますが、検察側は計画的な犯行であると主張し、医療システムの責任と被告の精神状態をめぐって激しい法廷闘争が続いています。
サウス・ショア・ホスピタルでの治療と精神科ナースプラクティショナーの証言
2026年8月11日、マサチューセッツ州の法廷において、リンジー・クランシーの裁判に関する審理が進行しました。サウス・ショア・ホスピタルの周産期行動保健プログラムでリンジー・クランシーを治療した精神科ナースプラクティショナーらの証言が法廷に提出されました。
先日の証言で、精神科ナースプラクティショナーのジュリー・ポールは、2022年11月当時のスクリーニングでクランシーが極度の不安を抱えていたことを明らかにしました。エディンバラ産後うつ病スケールでも高い数値を示していたものの、当時は自傷行為の意思や幻覚について否定していたといいます。
「彼女に自傷行為や子供たちに危害を加える気持ちがあるか具体的に尋ねましたが、彼女は『ない』と答えました」 ジュリー・ポール(精神科ナースプラクティショナー)、Boston.com報道
弁護側を率いる弁護士ケヴィン・レディングトンは、ポールが非番の日にもクランシーに連絡を取り自身の携帯電話番号を教えるなど、細やかな配慮とプロフェッショナルな姿勢で治療にあたったとして感謝の意を示しました。ポールに続いて、同じくサウス・ショア・ホスピタルで治療にあたった別の精神科ナースプラクティショナーであるレベッカ・ジョロッタが証言台に立ちました。
ジェニファー・タフツ医師のビデオ診療と処方をめぐる攻防
一方、事件前の数カ月にわたる治療体制についても鋭い追及が行われました。リンジー・クランシーの弁護人は精神科医ジェニファー・タフツの専門性や診療手法について厳しく尋問し、米国のメンタルヘルスケア体制がこの母親の急激な精神的悪化を防げなかったのではないかと主張しています。
弁護側のレディングトンは、タフツが実施した25分間のビデオ診療や限られた対話時間、コンピュータ化された問診票の利用、および副作用を訴えるクランシーに対して次々と変更された薬剤の処方手順を問題視しました。
これに対し、タフツ医師はビデオ診療について「見落としがあるとは感じられなかった」と述べ、患者には希望があることや治療の選択肢を伝えるよう努めていたと証言しました。タフツ医師は2022年9月から事件前日までクランシーを診療し、全般不安障害および抑うつ気分を伴う適応障害と診断していましたが、躁病のエピソードや幻聴については一度も報告されなかったと述べています。
マクリーン病院の証人採用をめぐる法廷の議論と裁判の争点
裁判ではさらに、入院先の環境をめぐる証人の採用問題も浮上しました。ウィリアム・サリバン裁判長は、元マクリーン病院のソーシャルワーカーであるエミリー・ソーンダイクの証人採用をめぐる弁護側の申し立てについて審理を行いました。
裁判長は、この件に関して陪審員を不在にした状態での審尋を行う可能性を示唆しつつ、決定を保留しました。
刑事責任能力とこれまでの経緯
クランシーは、2023年1月24日にマサチューセッツ州ダックスバリーの自宅地下で、5歳のコーラ、3歳のドーソン、生後8カ月のカランの子供3人を自宅のエクササイズバンドで絞殺した罪に問われています。彼女自身は犯行後に自宅の2階窓から飛び降りて重傷を負い、現在は腰から下が麻痺した状態にあります。

弁護側は殺害行為そのものは否定していないものの、産後精神病や双極性障害の重篤な症状のなかで幻聴に従わされたものであり、刑事責任能力はなかったと主張しています。これに対し、検察側は計画的で冷徹な犯行であると主張を続けており、司法の場における責任の所在をめぐる審理は今後も続きます。