5月に政権交代を果たしたハンガリーで新政権とロシアの関係が悪化しており、安全保障上の理由による外交官の国外追放や報復措置が相次いでいると、読売新聞が報じた。ウクライナを侵略するロシアへの距離感の見直しが進む一方、エネルギー依存を巡るジレンマも抱えている。
ハンガリー新政権によるロシア外交官の国外追放
ハンガリー新興政党ティサのペーテル・マジャル党首は5月の首相就任以降、ビクトル・オルバン前首相による強権的な政治体制の刷新を進めてきた。欧州連合(EU)との関係改善と並んで重要課題と位置付けられたのが、ロシアとの距離感の見直しである。オルバン前政権はロシアと蜜月関係を築いていたが、新政府は8月に公表した外交方針で、ウクライナを侵略するロシアは「ハンガリーや国際秩序への脅威だ」と表明した。さらに9月には、ハンガリー駐在のロシア外交官10人が「容認できない活動に関与した」として、国外退去を命じたと明らかにした。具体的な活動内容は示されていないが、ハンガリー国内でスパイ活動を行っていたとされている。
ロシア外務省による報復措置とハンガリー大使館への通告
ハンガリー側による外交官追放の動きに反発するロシア外務省は今月1日、モスクワのハンガリー大使館などの職員に退去を求めたと発表した。ハンガリーの臨時代理大使も呼び出し、ハンガリー側による追放措置は「根拠がない」と強く抗議した。両国の対応はここにきて急速にエスケレートしており、緊張関係がさらに高まる可能性が懸念されている。
マジャル政権の国内支持とロシア産エネルギーの依存
強気の外交方針を掲げるマジャル政権に対する国内の支持は高い。国内の調査機関メディアンが9月に公表した世論調査では、ティサを支持する人は54%に上り、前政権を担った右派「フィデス・ハンガリー市民連盟」の22%を大きく引き離している。一方で、マジャル氏は深刻なジレンマも抱えている。今年2月の米商務省の発表によると、ハンガリーは原油の85%以上をロシアから輸入している。ロシアが露産エネルギーの供給停止をちらつかせ、ハンガリーに揺さぶりをかける恐れは現実味を帯びている。
経済関係への影響と今後の見通し
インターファクス通信によると、ドミトリー・ペスコフ露大統領報道官は1日、ハンガリーの対応が両国の経済関係に影響する可能性を「否定できない」と牽制した。エネルギー価格の高騰で市民生活が打撃を受ければ、マジャル政権への支持が下落する可能性もある。外交上の対立が実体経済やエネルギー供給にどこまで波及するか、今後の両国の出方が注視される。