ニューヨーク市のゾーラン・マムダニ市長が推進する、高額なセカンドホームを対象とした「ピエ・ア・テール(別荘)税」の導入が、2026年8月10日、スタテンアイランドの裁判所によって一時的に差し止められた。住宅所有者らが市を提訴したことを受け、裁判所は課税対象リストの公開停止と通知送付の禁止を命じた。
裁判所による一時差し止め命令と訴訟の背景
スタテンアイランド最高裁判所のウェイン・オッツィ判事は、市が導入を進めていたピエ・ア・テール税に関し、その手続きを一時的に停止する命令を下した。この税は、ニューヨーク市内に住宅を所有しているものの、そこを主な居住地としていない所有者を対象とする課税制度である。
課税の対象となるのは、500万ドル以上の住宅、または100万ドル以上のコンドミニアムやコーポラティブ住宅を所有し、かつ居住していない人々だ。市はすでに約96万件の所有者リストを公開し、約1万7000件の住所に通知を送付していたが、今回の決定により、追加の通知発行やリストの公開が禁止された。
提訴した住宅所有者グループは、市が「主たる住居」であるにもかかわらず、誤って課税対象としてリストアップしたと主張している。彼らは法廷において、市が課税対象ではないことを証明する負担を住民に一方的に押し付けていると訴えた。
「市はニューヨーク市民に対し、課税対象ではないことを証明する負担を、恣意的かつ気まぐれに押し付けている」 原告側の訴状より
マムダニ市長の税収計画と市側の反論
このピエ・ア・テール税は、マムダニ市長とキャシー・ホークル知事が今年4月に発表したもので、年間5億ドルの税収を見込んでいた。マムダニ市長の支持者は、高騰する生活費に苦しむ都市において、富裕層の不動産所有から財源を確保する有益な手段であると評価している。一方で、共和党や一部の穏健派民主党員、ビジネスリーダーらは、富裕層が市を離れる原因になるとして強く反発してきた。
マムダニ市長の広報担当であるマット・ラウシェンバッハ氏は、今回の司法判断を批判し、市が即座に控訴する方針であることを明らかにした。
「この課税は、500万ドル以上のセカンドホームを所有する人々に、彼らが恩恵を受けている都市への公正な負担を求めるものです。法務局は即座に控訴し、命令の執行停止を求めるとともに、市はピエ・ア・テールの導入を継続します」 マット・ラウシェンバッハ、市長広報担当
市側は、制度の公平性と効果的な実施について自信を示しており、今後も法廷で争う姿勢を崩していない。
今後の見通しと影響
今回の司法判断は、今年の秋に控えた中間選挙を前に、住宅の負担能力を主要な争点とする民主党にとって、大きな痛手となる可能性がある。原告側の代理人を務めるランディ・マストロ元副市長は、裁判所の決定を歓迎する声明を発表した。
「裁判官の決定を非常に喜ばしく思います。この決定は、本来対象となるべきではなかった手続きに巻き込まれた何十万人ものニューヨーク市民の権利を正当化するものです」 ランディ・マストロ、原告側代理人
裁判所による今回の命令は、あくまで「一時的な差し止め」であり、市が控訴手続きを進める中で、この課税制度の是非をめぐる法廷闘争は長期化する見込みである。市が公開した約100万件に及ぶ課税対象リストの取り扱いを含め、今後の司法の判断が注目される。