南アフリカ出身の国際法学者ナビ・ピレイ氏が、国際司法と平和への長年の貢献により2026年のノーベル平和賞を受賞したことを受け、受賞を逃したドナルド・トランプ米大統領はノルウェーや同賞を非難し、自身の業績を主張する反発を見せている。.
2026年のノーベル平和賞は金曜日に発表され、ノルウェー・ノーベル委員会は、ジェノサイドや戦争犯罪の訴追における数十年にわたる取り組みにおいて、同氏が見せてきた「司法の厳格さ、個人的誠実さ、そして相当な勇気」を称賛した。南アフリカ出身の法学者である同氏は、同国においてアパルトヘイト体制下の人種差別と闘い、アパルトヘイト反対派の活動家たちの弁護を助けた経歴を持つ。また、南アフリカの高等裁判所で初の有色女性判事となり、その後はルワンダ国際刑事裁判所(ICTR)の裁判長を務めてレイプや性的暴行がジェノサイドの構成要件となり得ることを確立した画期的な裁判を主導した。さらに、2003年から2012年まで国際刑事裁判所(ICC)の判事を務め、2008年から2014年までは国連人権高等弁務官を歴任、現在は国際司法裁判所(ICJ)の判事として職務にあたっている。
ノルウェー・ノーベル委員会のヨルゲン・ワトネ・フライドネス委員長は、受賞発表の際、世界が法規範や法と正義への世界的な敬意を犠牲にして権力政治へとシフトしている現状を指摘し、「平和には正義が必要である」と訴えた。委員会は、国際法やその機関が政治的な攻撃に晒されている現在、同氏の受賞は平和と国際法を促進するうえでの重要なメッセージであると説明している。南アフリカのシリル・ラマポーザ大統領は、この受賞がピレイ氏の「勇気、誠実さ、そして正義に対する生涯をかけた献身」への讃えであると称賛した。国際刑事裁判所の赤根智子所長も、国際的な法の支配や法的秩序が深刻な挑戦を受けている現在において、今回の受賞は特別な意義を持つと述べている。
ニュルンベルクでの受賞とユーモアを交えた反応
ドイツのニュルンベルク・フォーラムの会場で受賞の知らせを受けたピレイ氏は、集まった聴衆からの拍手を受けながら、壇上でユーモアを交えたスピーチを行った。
ノーベル平和賞受賞者のナビ・ピレイ氏は、「もう少し拍手をもらえたら、この賞をトランプと分け合うかもしれないわね」と述べた。
この発言は、前年の平和賞受賞者であるベネズエラの野党指導者マリア・コリナ・マチャド氏が、受賞後にメダルをドナルド・トランプ米大統領に手渡した件を皮肉ったものと受け止められている。ピレイ氏は85歳での受賞となり、南アフリカの過去の受賞者であるアルベルト・ルツチー、デズモンド・ツチュ、ネルソン・マンデラの各氏やフレデリック・ウィレム・デクラーク元大統領らの系譜に名を連ねることになった。南アフリカのロルフ・メイヤー新ワシントン大使は、同氏が南アフリカ出身の5人目の受賞者であり、初の女性受賞者であると指摘している。
ドナルド・トランプ米大統領によるノルウェーへの猛烈な批判
一方で、受賞を逃したドナルド・トランプ米大統領は激しい不満を露わにした。ニューヨーク州シラキュースでの集会演説の中で、同大統領は今回の決定を「ノルウェー国にとっての消えない汚辱」と断じた。
ドナルド・トランプ米大統領は、「大統領としての私を代表するアメリカ合衆国がノーベル平和賞を受賞すべきだったが、そうならなかった。そしてこれは、ノルウェー国にとって、またあのような恥ずべき当惑させられる決定を下した人々にとっての消えない汚点である」と述べた。

大統領はその後も自身のソーシャルメディア上で長文の投稿を行い、これまで自身が8つの戦争を終結させてきたと主張した。今回受賞したピレイ氏について「誰も聞いたことのない、国連で働くリベラルな人物」と切り捨て、自身こそが賞を受けるべきだったと改めて強調した。トランプ氏は、平和賞の選考委員会について「自分のような人物には与えないことで評判がある」と非難したほか、自らがイランの核開発を阻止し膨大な命を救ったと主張した。
イスラエルからの猛反発と国際社会の反応
他方で、イスラエル政府は今回の受賞に対して極めて強い反発を示している。イスラエル外務省はソーシャルメディア上で、今回のノーベル賞決定を「反イスラエル的な憎悪と偏見を正当化するための賞のグロテスクな武器化である」と激しく非難し、偽りや憎悪に対する賞があればピレイ氏が最有力候補になるだろうと主張した。また、イスラエルのシュラト・ハディン法律センターのニツァナ・ダリシャン=ライトネル所長も、平和賞は平和構築者を称えるべきであり、イスラエルを政治的非合法化キャンペーンの被告席に引きずり込んだと非難される人物に与えるべきではないと疑問を呈した。ピレイ氏は国連の調査委員会の委員長としてガザでのジェノサイド認定に関する報告書を主導しており、ベンヤミン・ネタニヤフ首相やヨアヴ・ガラント前国防相らがジェノサイドを扇動したと指摘していた経緯がある。

国際刑事裁判所への追加制裁と今後の懸念
米国政権は国際刑事裁判所を「ならず者の裁判所」と呼び、資金源を断ってその運営能力を麻痺させると述べている。今回のピレイ氏の受賞は、国際社会における力による支配や司法機関への圧力に対抗する「強烈なメッセージ」であると位置づけられており、平和と国際法をめぐる米政権と国際司法機関の間の緊張は今後さらに高まる様相を見せている。