米国とロシアの首脳が9日の電話協議で、露産ディーゼル燃料の市場供給拡大で合意したと、毎日新聞やテレ朝NEWSなどが報じた。11月の中間選挙を控えて燃料高に悩むトランプ米大統領が制裁を緩和した形だが、過去2年の燃料価格は同氏の政策によって変動を繰り返してきた。
9日の電話協議で露産ディーゼル燃料の供給拡大に合意
米国とロシアの首脳が9日に電話会談を行い、ロシアが直ちに30万トン以上の軽油をアメリカなどの世界市場に供給し、11月以降も増やすことで合意した。毎日新聞の報道によると、トランプ米大統領は自身のソーシャルメディアへの投稿で、今回の合意が燃料価格下落という成果に直結すると主張している。さらに、取り組みが遅れる欧州各国に備蓄の放出を迫るほか、国際エネルギー機関(IEA)でも近く追加放出を議論する方針だという。同盟国に対しては軽油禁輸で脅す一方、ロシアとは取引によって手打ちをした形となっている。
アメリカ財務省による対ロ制裁緩和と背景にある事情
テレ朝NEWSによると、アメリカ財務省はロシア産軽油への経済制裁を来年4月まで緩和すると発表した。エネルギー経済社会研究所の松尾豪代表は、石油製品の価格上昇が支持率や選挙の争点に影響しかねない背景があると指摘する。アメリカ国内では軽油価格が今年に入り2倍近くに高騰しており、政権の審判となる中間選挙を控えて不満が高まっている。また、10月上旬は農業の本格的な収穫時期にあたり、トラクターやトラックなどのディーゼル燃料需要が急増するため、価格を抑えなければ食料品価格の上昇を招く懸念もあるという。
トランプ大統領のちぐはぐな対応と支持率の低迷
トランプ氏は2024年大統領選で石油増産による燃料価格引き下げを公約に掲げ、26年1月ごろにはガソリン価格が新型コロナウイルス禍以降で最低水準まで下がっていた。しかし毎日新聞が報じたように、成果を台無しにしたのはトランプ氏自身だった。2月にイラン攻撃に踏み切ったことで中東情勢が不安定化し、原油価格の高止まりを招いた。ジャーナリストの柳澤秀夫氏がテレ朝NEWSの番組内で指摘したところによると、最近の支持率は約30%まで落ち込んでおり、中間選挙を前に軽油の値段を下げることで支持率回復の道筋をつけたい思惑があるという。
ウクライナ側の反発と今後の対ロ制裁のゆくえ
テレ朝NEWSによると、明海大学の小谷哲男教授は、トランプ大統領が「軽油が高いのはイラン攻撃のせいではなく、ウクライナによるロシアの製油所攻撃が原因だ」と主張し、ゼレンスキー氏に攻撃停止を求めてきたと解説している。しかしその要求は聞き入れられず、今回の緩和についてはウクライナ側に伝えられなかった。事実上の経済制裁緩和に対し、ウクライナは強く反発しており、他国からも批判が出ている。一方で、燃料価格上昇に悩む国々からは安堵の声も聞かれるなど、受け止め方は複雑だ。今後ウクライナが攻撃を続ければ、ガソリンなどへ制裁緩和が広がる可能性や、ロシア側がさらなる金融制裁の緩和を要求してくることも考えられると報じられている。
