ウクライナのウラジーミル・ゼレンスキー大統領は、長期化する無人機(ドローン)作戦の拡大に伴い、ロシア領空が完全に危険な状態になりつつあるとして、すべての航空会社や保険会社に対してロシア領空の飛行回避を警告した。ゼレンスキー大統領は、モスクワやサンクトペテルブルクなどの主要な目的地へ向かう航空便を運航している事業者に対し、高まる領空リスクに注意を払うよう求めている。
ウクライナ大統領がロシア領空の危険性を指摘し航空会社に警告
警告を発した背景には、ウクライナがロシア国内の石油精製施設や物流拠点に対する長距離ドローン攻撃を強化し、モスクワ側にとっての戦争コストを引き上げようとしている動きがある。ゼレンスキー大統領は、民間航空機自体を標的として脅かすものではないと強調しつつ、ロシアの空には考慮せざるを得ない規模でドローンが飛来することになると述べた。
国際機関への通報と関係国の対応
ウクライナのアンリー・シビハ外相は、ロシア領空が民間航空にとって安全ではないことを国際民間航空機関(ICAO)に正式に通知したと、自身のX(旧ツイッター)への投稿で明らかにした。また、ウクライナの各機関が国際機関に対して、ロシア領空における危険性に関する完全な情報を提供する方針を示している。
一方、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領は、キルギスで開催された上海協力機構(SCO)の首脳会議で記者団に対し、こうしたウクライナ側の主張やコメントは「国家テロ」の宣言に等しいと非難した。さらに、交渉の再開に関する見方を退け、「テロリストとは交渉しない」と述べている。
運航を続ける各国の航空会社と飛行状況
ロシアが2022年2月に全面侵攻を開始して以来、大半の欧米系商業航空会社はロシア領空の飛行を避けている。しかし、中国、トルコ、およびカタール航空やアラブ首長国連邦(UAE)といった湾岸地域のキャリアをはじめとする一部の航空会社は、ロシア領空や主要空港の利用を続けている。

報道やフライト追跡ウェブサイトの「FlightRadar24」によると、警告が伝えられた後も多くの航空機がロシア上空を飛行しており、主要2空港を発着する便では一部に遅延が見られたものの、欠航は少数にとどまった。ロシア領空を通過して米国西海岸に向かう路線などを運航するカタール航空は、飛行計画について「領空の安全性や安全保障上の評価、地政学的動向の厳格かつ継続的なモニタリング」に基づいていると説明している。
また、格安航空会社(LCC)であるトルコのペガサス航空なども状況を慎重に監視している。
続く攻防と国際的な和平への働きかけ
ウクライナ側は、ロシアの全面侵攻開始以降、自国の空域をすでに民間航空機に向けて閉鎖している。ゼレンスキー大統領は、ロシア自身が戦争を引き起こしたことでこうした状況を招いたと批判しており、首都キイウやキイウ州に対する連日の攻撃など、民間人を標的としたロシア側の脅威に対抗する姿勢を示している。

国際舞台では、和平に向けた動きも模索されている。インドのナレンドラ・モディ首相は、上海協力機構首脳会議の合間にプーチン大統領と会談し、「終わりのない戦争」から敵対行為の停止へと移行するよう求めた。さらに、これに先立つ7月25日にはカザフスタンのカシムジョマルト・トカエフ大統領も、和平交渉への復帰と戦争の凍結を呼びかけている。
ウクライナ当局者は、民間航空の運航を攪乱することがクレムリン(ロシア政権)の戦争を国内の国民に実感させるための戦略的な手段であるとの見解を示している。