スペインの住宅危機を象徴する存在となっていた87歳の女性、マリカルメン・アバスカールさんが10月7日に死去した。9月23日の強制立ち退きを機に全土で住宅権を求める抗議活動が激化し、政府の住宅関連法令の否決や解散総選挙の決定へとつながる大きな波紋を呼んでいた。
強制立ち退きと病院での最期
87歳だったマリカルメン・アバスカールさんは、71年間住み続けたマドリードの自宅から9月23日に強制退去させられた。その際、ストレッチャーに乗せられて運び出される姿が報じられ、スペイン社会に衝撃を与えた。アバスカールさんは退去後、健康状態が悪化したためグレゴリオ・マラニョン病院に入院していた。50%の身体障害を抱えていた彼女は、その後の数日間を同病院で過ごすこととなった。
彼女の住居をめぐっては、所有企業である不動産会社ウルバヘスティオン(Urbagestión)が2018年に物件を取得して以来、賃貸契約の終了を求めて法廷闘争が続いていた。初期の裁判ではアバスカールさんが勝訴したものの、地方裁判所が所有者側の主張を支持し、2023年12月には最高裁判所が彼女側の控訴を棄却していた。強制立ち退きが実行されたのは、支援者らが建物の前で阻止を試みた末の「4回目の試み」であった。
「私たちはマリカルメンが今日亡くなったことを悲しみとともに発表します。この状況は、この国の歴史における転換点となりました」
マドリード借家人組合(Sindicato de Inquilinas)
組合側は、アバスカールさんの状況を「完全に回避可能だった」と表現し、その過程を「拷問のようなプロセス」と厳しく非難した。マドリード市当局の仲介により、彼女が住居へ戻れる歴史的な合意が成立していたものの、病院からの退院許可が下りる前であったため、この解決策は実現には至らなかった。
抗議運動の広がりと政治的余波
この社会的な混乱は政治の場にも波及した。政府が提出した住宅関連の「マリカルメン法」とも呼ばれる二つの法令が10月2日に議会で否決されたことを受け、ペドロ・サンチェス首相は11月29日に解散総選挙を行うことを決定した。さらに、住宅問題をめぐる労働組合による11月11日の全国ストライキも呼びかけられている。
「闘いは続く」という遺志
借家人組合の広報担当者アリシア・デル・リオ氏は、今回の事態を強く批判した。
「投機は命を奪います。今日、賃貸投機は私たちの仲間であるマリカルメンを殺し終えました。しかし、彼女の記憶は私たちと共に生き続けます」 アリシア・デル・リオ(マドリード借家人組合広報担当者)