住宅難が深刻化するスペイン・マドリードで、70年以上住んだ家から強制退去させられた87歳の女性が7日、入院先の病院で死去した。毎日新聞やBBCニュースなどの報道によると、この立ち退きを契機に住宅問題への抗議活動が全国へ拡大し、与野党対立から下院解散や11月の総選挙へと波及する政治問題に発展している。
家賃大幅引き上げと7年間の法廷闘争
毎日新聞の報道によると、死亡したのはマドリード中心部のアパートに1956年から住んでいたマリカルメン・アバスカルさん。父親が結んだ契約内容が引き継がれ、当時の家賃は500ユーロ(約9万円)程度だった。しかし、物件を買い取った不動産会社ウルバジェスティオンが、家賃を2650ユーロ(約47万円)に釣り上げ、その後1650ユーロまで引き下げたものの、アバスカルさんの月々の年金支給額1350ユーロを上回る水準だった。BBCニュースによると、裁判所がこれまでに3回強制退去を差し止めるなど約7年間の法廷闘争が続いたが、9月23日にストレッチャーに乗せられて強制退去させられた。
相次ぐ抗議活動とマドリードでの追悼集会
アバスカルさんの強制退去は、スペイン全土に広がる住宅難への国民の不満に火を付けたと毎日新聞は伝えている。BBCニュースによると、アバスカルさんの死去が伝えられたマドリードのプエルタ・デル・ソル広場では、人々が1分間の黙とうをささげた。広場周辺には数十本のろうそくがともされ、州政府庁舎前には「これは死ではない、殺人だ」、「マリカルメンはスペイン全体の祖母だ」といったメッセージが書かれた祭壇が作られた。抗議活動はマドリードだけでなく、バルセロナ、セビリア、マラガ、カディスなどの都市にも広がっている。
報道各社が伝える支援策の行き違いと政治的波及
アバスカルさんが亡くなったのは、その後の交渉で以前と同程度の負担で自宅に戻る算段が付いた直後のことだったと毎日新聞は報じている。BBCニュースによると、アパートを所有する投資会社は低い賃料での再入居を提案していたものの、アバスカルさんが入院したため正式な契約書に署名できていなかった。マドリード貸借人組合は、彼女の状況が「この国の歴史における転換点」になったと主張し、11月11日にゼネラルストライキを実施すると発表している。

スペイン総選挙の行方と今後の焦点
住宅問題への対処法を巡る与野党の対立は、サンチェス首相による下院解散へとつながったと毎日新聞は報じている。ペドロ・サンチェス首相はアバスカルさんの家族や愛する人々に哀悼の意を表明した。住宅危機をめぐる一連の抗議運動や社会の反応は、11月に予定されている総選挙の結果に直接的な影響を与える可能性があるとして、今後の動向が注目されている。