山口組分裂抗争の裏で、神戸山口組のマスコミ対策や情報戦を主導していたのは正木組の正木年男組長であると、ライターの鈴木智彦氏がnews-postseven.comで報じた。中国の古典や歴史を交えた巧みな話術が組織の追い風となった一方、最高幹部に対する批判の矛先には不可解なねじれも存在するという。
正木組長が主導した神戸側の情報戦と話術の背景
山口組の分裂抗争が激化する中、週刊誌を巻き込んだ情報戦の舞台裏では神戸山口組のマスコミ対策として正木組の正木年男組長が動いていた。山口組直参のひとりは正木組長について、ヤクザでありながら学校の先生のような雰囲気があり、中国の古典や日本史、世界史を例に出して立て板に水のように喋る話術が強力な武器になっていたと評価している。宝島社の書籍『山口組 分裂抗争の全内幕』に掲載されたインタビューでも、その巧みな言い回しが確認できる。正木組長は、向こうから逆縁をしておきながら自分たちを批判していると主張し、親分と子分の関係が搾取する主と奴隷の関係になっていたと西岡研介氏の取材に対して語っている。暴力団における若い衆の扱いや、トップに対する不満が分裂というマンモス組織のガス抜きになっている構造を指摘した。
週刊誌を舞台にした双方の情報発信とメディアの利用
一方で、NEWSポストセブンおよびYahoo!ニュースの報道によると、山口組側も初動段階から積極的にマスコミを利用していた。分裂から約1か月後の2015年10月1日号の『週刊新潮』には、山口組の一方的な主張が掲載された。山口組の直参組長から呼び出されたライターに対し、一流誌である新潮に自分たちの言い分を載せるよう要請があったという。同誌の記事では、双拠に取材を申し込んだ結果、山口組は直系組長4人が揃って応じたのに対し、神戸山口組は取材を断ったと明記されている。神戸側が取材を断ったのは大義論争で負けるからではなく、主張を喧伝するのに効果的な媒体や書き手、タイミングを使い分けていたためであり、情報戦では神戸側が圧倒的に優位に立っていたと報じられている。
「親分は絶対」という大義名分と内部の不満
山口組側は一貫して、離脱者たちが盃を返さずに去ったことは謀反であり、ヤクザの世界では親分が絶対であるため離脱者に一片の大義もないと主張を繰り返した。大義論争の枠組みにおいては山口組の主張が筋道にかなっており、何の話になっても最後は「親分は絶対」という原則に帰結する構造となっていた。これに対し、神戸山口組側は『山口組 分裂抗争の全内幕』の匿名インタビューで、どれほど誠の心を捧げて忠誠を誓っても吸い上げられるだけで用済みになれば捨てられると反発している。犬の茶碗でメシを食わされるようなプライドを傷つける扱いに対する不満が、組織内での離脱を正当化する大義として機能した。