市場の反応は対照的だった。買収発表後、PTCの株価は33.5%急騰し、10月5日には192.26ドルで取引を終えた。一方で、シュナイダーエレクトリック(Schneider Electric)の株価は10月5日に30.20ユーロ下落し、272.80ユーロ(-9.97%)で引けた。ロイター通信は、この1日の下落で同社の時価総額が約150億ユーロ消失したと推定している。
226億ドルの買収条件と財務リスク
今回の取引は全額現金による買収で、1株あたり205ドルが支払われる。これは直近の終値に対して42%から42.3%のプレミアムを上乗せした価格であり、企業価値(エンタープライズバリュー)は237億ドルにのぼる。シュナイダーエレクトリックの歴史の中で最大規模の買収となる。
買収価格は、PTCの2027年推定調整後EBITAの約21倍に相当する。この倍率は、2.5億ユーロのコスト削減と約8億ユーロの収益シナジーが実現した場合にのみ13倍まで低下する。ロスチャイルド&コー・レッドバーン(Rothschild & Co Redburn)のアナリスト、ジェームズ・ムーア(James Moore)氏は、8億ユーロという収益シナジーはPTCの売上高の約33%に相当すると指摘している。また、コスト削減には約2.5億ユーロの一回限りの導入費用が伴う。
産業用AIスタックの統合と戦略的狙い
Interact Analysisのシニアアナリスト、マチュー・クレザク(Matthieu Kulezak)氏は、PTCの買収がシュナイダーに「製品エンジニアリングへのショートカット」を提供し、シーメンス(Siemens)への挑戦を強めると同時に、ダッソー・システムズ(Dassault Systèmes)やオートデスク(Autodesk)にとって、工場オートメーションに直接アクセスを持つより強力な競合相手を生み出すと分析している。
「共に、私たちは物理的世界とデジタル世界を橋渡しする、業界で最も完全なソフトウェア&AIパワーハウスであり、最高品質のポートフォリオを構築しています」 Olivier Blum, Schneider Electric CEO

オリビエ・ブルム(Olivier Blum)CEOは、AIが物理的な製品や機械、エネルギーシステムに組み込まれる中で、PTCのエンジニアリングおよび設計データがAIを顧客の産業運用に展開する能力を強化すると述べている。また、この統合により、グループ全体の売上高に占めるSaaS(Software-as-a-Service)収益の割合は約24%に上昇し、高成長の継続課金型ソフトウェアへの移行が加速するとしている。
AIによる評価への懸念と市場の懐疑心
市場が懐疑的な反応を示したのは、買収規模の大きさと、AI関連の不確実性が続く中でのソフトウェア企業のバリュエーションに対する懸念からだ。また、PTCがThingWorxやKepwareを売却してポートフォリオを絞り込んできた一方で、シュナイダーが資産を蓄積してきた経緯があり、異なるデータアーキテクチャや販売チャネルを顧客が自ら統合しなければならないリスクが指摘されている。
今後のスケジュールと不透明な点
両社は、この買収を2027年第3四半期までに完了させる見込みである。PTCはグローバルに3万人以上の顧客を抱え、エンジニアが自動車部品や医療機器などのハードウェア設計に使用するCreoアプリケーションで知られている。2025年の実績では、PTCは27億ドルの売上高と1株あたり6.14ドルの利益を計上していた。