コンゴエボラ流行「対策遅れ」WHO警告 死亡者220人超
世界保健機関(WHO)は2026年5月25日、コンゴ民主共和国(DRC)で発生しているエボラ出血熱の流行が、対策のスピードを上回る速さで拡大していると警告しました。現在までに220人の死亡が疑われており、周辺諸国への感染リスクが極めて高まっていることから、WHOは国際的な協力と早急な対応を求めています。 ## 制御不能に陥る感染拡大とWHOの警告 コンゴ民主共和国のイトゥリ州を中心に広がる今回のエボラ出血熱の流行は、発生から数週間、あるいは数ヶ月間未発見のまま推移していた可能性が指摘されています。WHOの最新データによると、感染が疑われる症例は900件を超え、死亡者数は220人に達しました。 WHOのテドロス・アダノム・ゲブレイェスス事務局長は、アフリカ連合のオンライン会議において、現在の危機的状況を次のように述べています。 「我々は緊急に活動を拡大していますが、現時点では流行が我々の対応を上回っています。」テドロス・アダノム・ゲブレイェスス事務局長(WHO) また、WHOの健康緊急事態警戒・対応オペレーション担当ディレクターであるアブディラフマン・マハムド氏は、ウイルスが急速に広がる潜在的なリスクについて「非常に高い」と警鐘を鳴らしました。同氏は、この事態が「状況全体を劇的に変化させた」と指摘しています。 ## 医療施設への襲撃と現場の混乱 流行の中心地であるイトゥリ州では、医療施設に対する住民の攻撃が相次いでおり、封じ込め活動を著しく妨げています。特にモンブワルにある総合病院では、5月23日と24日の両日にわたり激しい攻撃が発生しました。 同病院の医療責任者であるリチャード・ロコドゥ医師によると、23日には「正体不明の個人」が国境なき医師団(MSF)の隔離テントを焼き払い、治療中だったエボラ患者18名が逃走する事態となりました。24日には宗教指導者の親族らに動員された若者たちが4波にわたる襲撃を行い、警察や軍が介入する事態に発展しました。 こうした混乱の背景には、エボラ出血熱に対する根深い不信感と、伝統的な埋葬方法への固執があります。感染力の強い遺体の取り扱いを当局が管理することに対し、一部の家族が反発し、遺体を奪還しようとする動きが暴力へとエスカレートしています。 5月21日にも、ブンヤ近郊のルワンパラで治療センターが焼き払われる事件が発生しました。当局が遺体の引き渡しを拒否したことに怒った住民たちが起こした行動であり、こうした伝統的な埋葬儀式に伴う接触が、過去の流行においても感染拡大の主要な要因となってきたと報告されています。 ## 希少なウイルス種と周辺国への波及 今回の流行を複雑にしている要因の一つが、原因となっているウイルス種です。コンゴ民主共和国の国立生物医学研究所によると、今回の流行は「ブンディブギョ(Bundibugyo)」種によるものであり、これまで主流だったザイール種とは異なります。ザイール種には承認済みのワクチンが存在しますが、ブンディブギョ種には承認されたワクチンや治療法がありません。 感染は国境を越え、隣国ウガンダにも広がっています。ウガンダ保健省は5月25日、新たに2名の医療従事者の感染が確認されたと発表し、同国での累計確認症例数は7件となりました。 アフリカ疾病予防管理センター(Africa CDC)のジャン・カセヤ事務局長は、アフリカ大陸の11カ国が現在、リスクにさらされていると警告しました。WHOは今月、本件を「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態」と宣言しており、テドロス事務局長は「これほどの規模の流行に、単独の国で対応することは不可能だ」と述べ、国際社会の連帯を強く求めています。 現場では、赤十字のボランティア3名が感染した遺体の取り扱い中に死亡するなど、支援活動自体が極めて危険な状況にさらされています。今後、テドロス事務局長はWHOの健康緊急事態プログラム担当エグゼクティブ・ディレクターであるチクウェ・イヘクウェアズ氏と共に現地入りする予定であり、さらなる対応の強化が急務となっています。