米国民の飲酒習慣が歴史的な転換点を迎えている。世論調査会社ギャラップが8月20日に公表したデータによると、アルコールを日常的に摂取する成人の割合は54%となり、1939年の調査開始以来で最低を記録した。かつて70%を超えた飲酒率はなぜ急落したのか。健康意識の変化と医学的な警告が背景にある。
飲酒率54%で過去最低を記録
米国の飲酒実態は、長年にわたる右肩下がりの傾向を強めている。ギャラップ社の調査によると、18歳以上の成人のうち「普段からアルコールを飲んでいる」と回答した人は54%だった。2020年に60%を割り込んで以降、2024年には58%、そして直近の1年間でさらに54%まで減少したことが確認された。1975年当時には70%を超えていた飲酒率は、半世紀を経て大きく様変わりしたことになる。Yahoo!ニュースが伝えたところによれば、かつて「TGIF!(ありがたや、金曜日)」の掛け声とともにビジネスパーソンがバーにあふれた光景は、もはや過去のものとなりつつある。

互助組織AAの会員数にも減少の波
アルコール依存症への対策として世界的に知られる国際的互助組織「Alcoholics Anonymous(AA)」の動向も、この傾向を裏付けている。かつて全米で120万人、世界全体で250万人の会員を擁した巨大組織の勢力は、近年縮小傾向にある。2021年段階での会員数は196万人にまで減少しており、特に若年層メンバーの離脱が顕著であるという。かつてヘミングウェーやエドワード・ケネディ元上院議員、ベティ・フォード氏といった著名人が苦悩を公言し、社会問題として深く根を張っていたアルコール依存症の構図そのものが、米国社会で変化し始めている。
「少量の飲酒も危険」とする医学的エビデンス
飲酒人口の減少には、健康に関する認識の歴史的なシフトが深く関わっている。Wedge(ウェッジ)の報道によると、米国人の過半数(51~53%)が現在、「たとえ少量でも健康を害する」と認識しており、この割合は2001年調査時の27%から倍増した。この意識変革の背景には、近年の医学的研究報告がある。調査対象者の86%が、飲酒ががんや心臓病、精神不安のリスクを高めるというニュースに接したと回答している。世界保健機関(WHO)や米国立がん研究所などが発表した研究は、従来の「適度な飲酒は健康にプラス」という通念を覆すものとして重視されている。
- WHO報告:アルコールはアスベストやたばこと同様の「グループ1」発がん性物質と分類。
- 連邦政府調査:12歳以上の「アルコール依存症患者」の割合は、2021年の10.6%から2025年には8.9%へ減少。
「百薬の長」神話の崩壊と今後の見通し
飲酒を控える動きは、公衆衛生当局の姿勢とも合致している。2025年1月には米公衆衛生長官が飲酒とがん発症の相関関係について通達を出したほか、疾病予防管理センター(CDC)も「いかなる量の飲酒もがんリスクを高める」と明言した。一部では肥満症治療薬「セマグルチド」の服用と飲酒量減少の関連を指摘する声もあるが、常用者が限定的であることから、専門家の間でも決定的な要因とは断定されていない。かつてワインを健康増進の手段として捉えていた米国社会は、科学的なリスク評価を優先する社会へと移行した。今後もこの健康志向が続く限り、アルコール市場の縮小と飲酒習慣の変容は、さらに定着していくものと見られる。