イスラエルとイスラム主義組織ハマスの戦闘開始から10月7日で3年が経過した。ガザ地区では死者が7万4000人を超え、人口の約9割にあたる190万人が避難を余儀なくされている。読売新聞などの報道によると、インフラの破壊と社会の分断が深刻化し、人道状況は悪化の一途をたどっている。
ガザ地区の破壊と避難生活の現実
2023年10月の戦闘開始から3年、パレスチナ自治区ガザの風景は一変した。今年8月、ガザに戻ったアフマド・シカリさん(45)は、最南部ラファの状況について「人の暮らしも草木の命も、全て消えてしまったようだ」と語った。読売新聞の報道によると、国際赤十字の職員はシカリさんに対し、「ガザは地図から消されてしまったのです」と伝えたという。国連のデータでは、ガザ地区の人口の約9割にあたる190万人が避難を余儀なくされ、死者数は7万4000人を超えた。かつての日常生活は崩壊し、多くの住民がテント生活を強いられている。
子供たちが直面する学習機会の喪失と労働
戦闘は子供たちの未来を奪っている。国連によると、ガザ地区で学習の機会を失っている子供は約20万人に上る。ハンユニスで紅茶を売る13歳のファディ・オウェイダ君は、家族を支えるために学校へ通うことを諦めた。朝5時から水をくみ、拾ったまきで湯を沸かす日々を送るオウェイダ君は、「飢え死にしないために働いている」と明かした。一方、テレ朝NEWSによると、医療現場でも深刻な状況が続いている。3Dプリンターを用いた火傷治療を行う「国境なき医師団」は、材料の不足により治療継続が困難な状況にあり、戦闘で足の切断を余儀なくされた7歳のガザルさんのような子供たちが、義足でのリハビリを続けながら日常を取り戻そうと苦闘している。
社会結束の崩壊と薬物乱用の拡大
戦闘による家族の死別や避難は、ガザ地区で長く続いた住民同士の助け合いの精神を弱体化させている。読売新聞によると、食料や燃料が不足する一方で薬物は手に入りやすい状況にあり、大麻や合成麻薬の乱用が家族の生活を破壊しているという。ガザ警察の麻薬対策部門は、密輸にイスラエルの治安機関が関与していると主張した。政治アナリストのターベト・アムール氏は、「ガザの社会的な結束は崩れつつある」と指摘しており、街並みだけでなく、地域社会の絆を再構築することが復興の大きな障壁となっている。
イスラエル社会における安全神話の終焉
イスラエル国内でも、10月7日の襲撃は歴史的な転換点となった。ハイファ大学名誉教授のファニア・オズ・ザルツベルガー氏は、読売新聞に対し「最大の崩壊は安全神話だ」と語った。かつてイスラエル社会は、紛争は管理可能だと信じていたが、現在は将来への不安が広がっている。また、政府の対応を巡り、国際的な同情は失われ、孤立を招いているとの見方を示した。国内では、襲撃の衝撃から抜け出せない層と、ガザやヨルダン川西岸への再入植を求める層の間で意見が二分されており、社会の共同体意識は低下している。

和平に向けた模索と残された課題
パレスチナとイスラエルの共存については、専門家の間でも見解が分かれている。クッズ大学元学長サリ・ヌセイベ氏は、読売新聞の取材に対し、武力では問題は解決できないと強調した。ヌセイベ氏は「パレスチナ人への尊厳や働く機会を保障する必要がある」と説き、連邦制や1国家解決を含め、双方が公平だと感じられる解決策の必要性を訴えた。一方で、イスラエル国内でも「2国家解決」の可能性を唱える声は残る。和平交渉の再開は見通せず、暴力的な入植者の排除や、人々の希望をいかに取り戻すかが、長期的な課題として残されている。