ウクライナの戦場では、数億円規模の最新鋭戦車が数万円の使い捨てドローンによって破壊される現代戦の変化が起きている。元陸上自衛官の佐藤正久氏がPRESIDENT Online(プレジデントオンライン)の寄稿で指摘したもので、安価な小型無人機の普及が従来の軍事常識を塗り替えている実態が浮き彫りになっている。
小型FPVドローンが変える現代戦の実態
ウクライナやロシアの戦場では、小型の「FPVドローン」が爆発的に普及しこれまでの戦争の常識を覆している。操縦者が専用ゴーグルを装着し、カメラ映像をリアルタイムで見ながら操作するのが特徴である。まるで自分がドローンに乗って空を飛んでいるかのような視点で動きを制御できる。この技術により、時速100キロ以上のスピードで飛びながら、戦車の装甲が薄い後部エンジン付近や、わずか数十センチの砲塔の隙間、ハッチの開口部などをピンポイントで狙う攻撃が可能になった。後方の安全な基地からエリート操縦士が飛ばす従来の大型兵器とは異なり、今の戦場では最前線の歩兵がバックパックからドローンを取り出してその場で放つ光景が新しい日常となっている。

数万円の兵器が数億円の装備を無力化するコストの逆転
FPVドローンの最大の驚異はその圧倒的な安さにある。1台あたり数万円から十数万円程度の市販部品で構成され、そこに安価な手榴弾や対戦車弾頭を括り付けて運用される。プレジデントオンラインの報道によると、10億円を超えるような最新鋭戦車であっても、こうした数万円の使い捨てドローンによって致命的なダメージを受ける。爆薬の積載量が少ないため広範囲を吹き飛ばすことはできないが、艦船の煙突やスクリュー、戦車のハッチといった急所を的確に叩くには十分である。力任せに押し通すのではなく、最小限のエネルギーで相手の機能を停止させる「無力化」が現在の主流となっている。
水中にまで広がる無人兵器の脅威と潜水艦の破壊
ドローンの活躍領域は空や地上、水上に留まらず、ついに水中の領域へと拡大している。ウクライナ保安庁が実施した作戦では、「サブ・シーベビー」と呼ばれる水中ドローンがロシア軍のキロ級潜水艦を行動不能に追い込んだ。約4億ドル、日本円でおよそ620億円の価値がある海軍の最重要資産が、わずか数千万円の無人兵器によって沈められた形だ。電波の届かない水中でもAIが自ら判断し、ソナー網をくぎ抜けて敵の艦尾付近にある舵やスクリュープロペラなどの急所を突く。高価で巨大な潜水艦が安価な使い捨てドローンにあっけなく破壊されたこの出来事は、戦争がコストや規模の差が通用しない非対称戦の時代に突入したことを示している。

電線にとまる待ち伏せ攻撃ドローンと戦術の進化
Forbes JAPANの報道によると、ウクライナの開発者たちは「パーチング」型と呼ばれる鳥のように高所にとまる新型の待ち伏せ攻撃ドローンを実戦配備している。従来のドローンは道路脇や屋上など地面に着地して待機していたため視界が限られていたが、高圧電線にぶら下がることで遠方の目標をより広く見渡せるようになった。このドローンは電線から直接電力を取り込んで待機時間を延ばせるかどうかが注目されている。目標から数メートルの距離からいきなり飛び立つため、相手に警戒する時間的猶予を与えない。こうした無人機の大量投入に対し、ウクライナ側も防空システムの導入や新たな迎撃手段の確保を急ぐなど、終わりなき技術と戦術の応酬が続いている。