2026年10月11日、イギリス・ドカステルのヨークシャー・ライオンパークで、トラの飼育エリアに立ち入った男性が同動物に襲われて死亡しました。サウス・ヨークシャー警察と施設側によると、トラのアルタイは安楽処分されない方針です。
ヨークシャー・ライオンパークでの悲劇的な事件の経緯
2026年10月10日の午後1時35分頃、イギリス北部ドカステル近郊にあるヨークシャー・ライオンパークで、身元の公表されていない男性がトラの飼育エリアに侵入しました。
サウス・ヨークシャー警察の発表によると、男性は現場で緊急医療スタッフによる救命措置を受けたものの、重傷がもとでその場で死亡が確認されました。
サウス・ヨークシャー警察は、通報を受けて直ちに警察官と緊急医療スタッフが現場へ出動したと述べました。救急当局によると、事件現場には2台の救急車に加え、ヨークシャー航空救急および医師が派遣されました。同動物園は2009年に開業し、2011年に「ラン・オブ・ザ・タイガーズ」というアトラクションがオープンしました。この展示エリアは絶滅危惧種であるアムールトラ(シベリアトラ)のために特別に造られた2エーカー(約0.4ヘクタール)の保護区であり、野生では約500頭しか残されていないとされています。野生の同亜種が暮らす環境を再現するため、敷地内には木立や草原、滝のプールが設けられており、訪問者は地上から約1層高い場所にある約300メートルの高架歩道からトラの様子を観察できるようになっています。この通路から囲いの中までは地上から15フィート(約4.5メートル)以上の深い段差が設けられています。事件の発生後、警察は一般の人々に向けて、オンライン上で拡散されているこの事件に関する動画を共有しないよう強く呼びかけました。また警察は、亡くなった男性の身内がすでにこの悲劇を把握しており、専門の係官による支援を受けていることを明らかにしました。

目撃者の証言では、男性は事件の直前、観覧用の橋からエリア内へ飛び降りたとされています。現場に居合わせた女性が男性の侵入を止めようと試みたものの、男性はそれを振り切って飛び込んだということです。
動物園を訪れていたある訪問者の女性は、子ども2人と共にその場に居合わせ、男性が囲いのフェンスへと飛び出すのを必死に阻止しようとしたと語っています。別の目撃証言によると、現場の女性は恐怖心を抱いた様子で、男性は彼女の手を振り切ってからエリア内へと身を投げました。別の来園者であるアンソニー・ハントとガールフレンドのスカーレット・ホーガンがテレグラフ紙に語ったところによると、トラは近づいてきた男性を認めた後に「ストークモード(忍び寄り態勢)」に入ったということです。ホーガンは、男性が自撮りをしているように見え、その後四つんばいになって祈るような仕草を見せたと証言し、現実離れした奇妙な光景だったと振り返っています。別の来園者であるマリー・ミラーがSNSに投稿した内容によれば、事件前の男性はイヤホンを装着した状態で橋の上を歩き、見知らぬ人に対してトラを背景に写真撮影をしてほしいと頼むなど、楽しげな様子を見せていたといいます。また、別の匿名女性は、園内が封鎖されて案内を受ける中で、何が起きたのか分からないまま恐怖と混乱に包まれたと南ウエスト・ニュース・サービスに語りました。
アルタイの処分を否定した施設側の判断
事件に関わったトラは、シベリアトラ(アムールトラ)のオスで、名前はアルタイです。施設側には多くの問い合わせが寄せられましたが、当局はトラが自ら逃げ出したわけではなく、エリア内に留まっていたことを確認しています。

動物園側は日曜日に発表した声明の中で、アルタイについて明確な方針を示しました。
ヨークシャー・ライオンパークは公式声明で、「トラのアルタイに関して、非常に多くの方々からお問い合わせをいただいております。皆様に安心していただけるよう、アルタイは安全かつ健康な状態で保護されており、今回の件で安楽処分されることはないと断言いたします」と述べた。
アルタイは2025年3月にノルウェーの動物園「ディレパルケン」から1,135マイル(約1,826キロメートル)以上の距離を移動して同パークへやってきた個体であると、パーク側は説明しています。キャロル・バスキンをはじめとする動物愛護関係者からも、トラが野生の本能に従った行動をとったに過ぎないとして、動物の安全を求める声が上がっていました。

タンプを拠点に大型ネコ科動物の搾取反対活動を行う非営利団体「ビッグ・キャット・レスキュー」のCEOであるキャロル・バスキンは、メディアの取材に対して、トラは野生の強力な捕虜であり、いかなる飼育や訓練、慣れもその本性を変えることはできないと述べました。その上で、トラは野生動物としての正しい行動をとっただけであり、害を加えられなかったことに安堵していると表明しました。さらに、事件を引き起こしたすべての背景や経緯がまだ判明していない段階で性急な推測をするべきではないと訴え、遺族に対して深い哀悼の意を示すとともに、現場を目撃した人々への気遣いを語りました。地元ドカステル選出の下院議員であり英国の外務大臣を務めるエド・ミリバンドも、自身の公式SNSを通じて、今回の事件の知らせを受けて深く悲しんでいると述べました。ミリバンドは、現場に対応にあたった緊急サービスや公園スタッフに対して心からの感謝の言葉を述べるとともに、亡くなった人物の家族に対して哀悼の意を表しました。警察の発表によると、サウス・ヨークシャー警察は遺族の希望を尊重し、被害に遭った男性の身元を公表しない方針をとっています。
進められる安全衛生調査と今後の対応
事件を受けてシティ・オブ・ドカステル・カウンシルの許認可当局は、安全衛生に関する調査を開始しました。施設は週末を通じて閉鎖され、事件に直面して深い精神的ショックを受けたスタッフに対して専門的なカウンセリングや支援が提供されています。

ヨークシャー・ライオンパークは、調査を継続しスタッフの精神的ケアを行うため、月曜日の終日についても引き続き閉園すると発表しました。当局および動物園は緊密に連携を取りながら、今回の悲劇的な事故に至った詳しい経緯の究明を進めています。