広島・鳥取県境を結ぶ国道183号「鍵掛峠道路」について、国土交通省中国地方整備局は2026年10月に事業継続を決定した。延長3.5kmの鍵掛峠トンネルが貫通したものの、突発湧水や工事難航により2025年度を予定していた開通時期は白紙となっており、総事業費は約637億円へと膨らんでいる。
中国山地を横断する鍵掛峠道路の概要と進捗
国土交通省中国地方整備局が2026年10月に実施した事業再評価により、国道183号「鍵掛峠道路」の事業継続が正式に決定した。trafficnews.jpおよびcarview.yahoo.co.jpの報道によると、この事業は広島県庄原市から鳥取県日南町新屋に至る延長12.0kmのバイパス道路整備である。中国地方の一般国道では最長となる延長3.5kmの「鍵掛峠トンネル」(仮称)が2025年10月に貫通した。2026年度末における進捗率は、用地取得が92%、事業費ベースの全体進捗が70%の見込みとなっている。
並行する現道が抱える線形不良と防災上の課題
鍵掛峠周辺の現道である国道183号は、急峻な地形を通過するため深刻な構造上の問題を抱えている。両メディアの報道によれば、半径150m未満の急カーブが74か所に及び、5%以上の急勾配区間が約5.0kmにわたって連続する。さらに法面崩壊や土砂崩れなどの災害が多発し、過去23年間で10回、合計約1万4900時間の通行規制が発生した。冬期には積雪によるスリップ事故や大型車の立ち往生も頻発しており、交通の安定性と防災面の強化が急務となっている。
総事業費が約637億円へ膨らんだ要因と工事の難航
2005年度の事業化以来、事業費は増加を続けており、今回の再評価では総事業費が前回から約114億円増額されて約637億円となった。増額の背景には、想定外の地質への対応や法面対策工の追加、労務費および物価の上昇がある。また、切土の発生土を盛土に流用する計画だったものの強度不足が判明し、一部を購入土へ切り替えたこともコストを押し上げた要因だと両メディアは伝えている。
トンネル湧水による工事のストップと開通見込みの行方
最難関とされる鍵掛峠トンネルの工事では、湧水対応のために掘削が約半月にわたってストップしたほか、貫通後も突発湧水への対応に追われている。有識者を交えた検討委員会が打ち出した対策工を現在も実施している状況だ。もともと2025年度の開通を予定していたが、相次ぐ工事の難航によって現在は白紙のままとなっており、新たな開通見込みについては示されていない。