NASAが計画する「アルテミスIII」ミッションは、人類の宇宙飛行史上、最も精緻かつ複雑な試みの一つとなる見通しです。2027年に予定されているこのミッションの目的は、次世代の月面探査プログラムに向けた技術の実証であり、宇宙飛行士を地球低軌道(LEO)へ送り、民間企業が開発した月着陸船とのランデブーおよびドッキング操作を検証することにあります。
ミッションの構造と「アルテミスIII」の重要性
アルテミスIIIは、NASAが将来の月面着陸に向けて実施する「ドレスリハーサル」と位置付けられています。このミッションには、NASAの宇宙飛行士ランディ・ブレスニック(司令官)、ESA(欧州宇宙機関)のルカ・パルミターノ(パイロット)、およびNASAのミッションスペシャリストであるアンドレ・ダグラスとフランク・ルビオの4名が搭乗します。なお、バックアップとしてロバート・ハインズが名を連ねています。

ミッション期間は約2週間を予定しており、これはアルテミスIIの10日間を上回ります。この期間中、NASAの「スペース・ローンチ・システム(SLS)」ロケットで打ち上げられた「オリオン」宇宙船が、SpaceX社の「スターシップ」およびブルーオリジン社の「ブルームーン」という、2つの異なる民間月着陸船と個別にランデブーを行います。
民間パートナーとの連携とテスト内容
NASAは、スペースX社およびブルーオリジン社と密接に協力し、両社の着陸船の「テスト記事(試験機)」を軌道上で評価します。

* ブルーオリジン(ブルームーン): 現在のマーク2クルー着陸船の設計に基づき、環境制御・生命維持システム(ECLSS)、クルーキャビン、アビオニクスを搭載します。テスト中、2名のクルーがハッチを開けて内部へ立ち入る予定です。また、宇宙飛行士の環境をシミュレーションするための「月面宇宙服質量シミュレーター」も搭載されます。 * スペースX(スターシップ): バージョン3の試験機が使用されます。機首にドッキングシステムが追加されますが、アルテミスIIIのミッションにおいて宇宙飛行士がスターシップ内部へ入ることはありません。
NASAのヒューマン・ランディング・システム・プログラムマネージャーであるスティーブ・クリーチ氏は、「各プロバイダーは異なるアプローチをとっており、このミッションを通じて、有人着陸に先立ち宇宙船と打ち上げロケットに対する理解と信頼を深める」と述べています。
複雑な打ち上げと運用上の課題
アルテミスIIIは、ケネディ宇宙センター(KSC)とケープカナベラル宇宙軍基地(CCSFS)という複数の場所から、異なるロケットを使用して実施されます。ブルームーンはブルーオリジン社の「ニューグレン」ロケットで、オリオンはSLSロケットで打ち上げられます。
このミッションの成功は、2028年に予定されているアルテミスIVによる月面着陸に向けた不可欠な布石となります。NASAは、アルテミスIIIで得られる飛行データを通じて、将来の有人月面探査の安全性を確保する方針です。
Sources: Space.
