「餃子の王将」を展開する王将フードサービスの社長だった大東隆行さん射殺事件で、京都地裁は16日、殺人などの罪に問われた特定危険指定暴力団工藤会系組幹部の田中幸雄被告に無罪判決を言い渡した。西川篤志裁判長は、実行犯であることについて合理的な疑いが払拭できないと判断した。
王将フードサービス社長射殺事件の判決と無罪の理由
京都地裁で16日に下された判決で、西川篤志裁判長は検察側が主張した直接証拠や間接証拠のいずれについても、被告が犯人であると断定するには足りないと結論づけた。起訴内容は2013年12月19日早朝、京都市山科区の本社前駐車場で大東隆行さんを拳銃で撃って殺害したというものだった。
事件から9年を経た22年10月に逮捕された田中被告は、別の事件で有罪判決が確定し福岡刑務所で服役中だった。裁判は裁判員裁判の対象とされていたが、安全上の配慮などから裁判官のみで行われ、最高裁もそれを支持したと、FNNプライムオンラインが報じている。
現場に残されたたばこの吸い殻と唾液のDNA型
検察側は立証の柱の一つとして、事件直後に現場付近で見つかったたばこの吸い殻2本を挙げた。吸い殻の唾液のDNA型が被告のものと一致し、被害者を待ち伏せていた被告が事件直前に捨てたものだと主張していた。
しかし判決は、被告の喫煙後と認めつつも、第三者が持ち込んだ可能性や別の機会に捨てられた可能性を排斥できないと指摘した。さらに「捜査をかく乱させる目的で被告の犯行と装う可能性がある」とも言及し、検察側の主張をしりぞけた。FNNプライムオンラインの報道によると、この吸い殻に関する間接証拠の評価が、無罪を導いた大きな理由の一つとなった。
盗難バイクや軽乗用車と犯行準備の関係性
もう一つの立証の柱は、犯行準備に使われたとされる軽乗用車とオートバイの存在だった。事件2カ月前に京都府内で盗まれたバイクのハンドルからは硝煙反応が確認され、スクーターの盗難現場付近の防犯カメラには被告の幼なじみのものと特徴が一致する軽乗用車が映っていた。
判決では、これらのバイクが事件と何らかの関係性を持つ可能性を認めつつも、「無関係の別人によって盗まれた可能性は排除できない」と判断した。幼なじみが証人として車を貸したと証言したものの、検察側の描いた犯行準備のストーリーを裏付けるには至らなかった。
一貫して無罪を主張した被告の法廷での姿勢
田中被告は初公判から一貫して起訴内容を否認し、「決して犯人ではありません」と訴えてきた。FNNプライムオンラインの報道によると、法廷では終始落ち着いた様子を見せ、判決言い渡しの際もうなずきながら弁護人に頭を下げる仕草があったという。
一方で、裁判長から意見を問われた際には「傍聴席にいる一人ひとりの肩をつかんで犯人ではありませんと伝えてまいりたい」と強い言葉で無罪を主張した。ただし、検察官や裁判官からの質問を受ける被告人質問では供述を拒否し、実施されなかった。

被害者遺族の処罰感情と検察側の今後の対応
被害者参加制度を利用して意見を述べた遺族は、検察官を通じた代読で「被告は罪を認めず、反省の弁も無い。被害者遺族が求める厳しい処罰感情に応える処罰を望みます」と訴えていた。検察側は無期懲役を求刑していた。
判決を受け、京都地検の森田昌稔次席検事は「検察官の主張が受け入れられず、残念である。判決内容を精査し、上級庁と協議のうえ、適切に対応したい」とコメントしている。事件の背景にある真相や組織の関与など、解明されていない多くの謎は今も残されたままであり、京都府警による捜査が続けられている。