カリフォルニア州のギャビン・ニューサム知事は、州内の電力・ガス会社が設備に起因する山火事を引き起こした際、その巨額の損害賠償負担を軽減する新たな制度の導入を模索している。ニューサム知事は任期の最終局面において、電力会社が倒産のリスクを負うことなく、かつ山火事被害者への迅速な賠償を可能にする枠組みの構築を目指し、州議会と交渉を続けている。
ニューサム知事、電力・ガス会社の山火事損害負担を巡る新制度を模索
カリフォルニア州では、電力設備の不具合が山火事の火元となるケースが頻発しており、州内の破壊的な山火事上位10件のうち6件が電力会社設備に起因している。現行の州法では、過失の有無にかかわらず、電力会社は設備が引き起こした火災の損害賠償責任を負う「無過失責任」に近い枠組みが適用されている。
山火事基金の枯渇と新たな債務リスク
ニューサム知事は、2019年に設立された210億ドル規模の「山火事基金」が間もなく枯渇する見通しであることを挙げ、現行制度の限界を訴えている。「現状のままでは機能しない」と述べた知事は、山火事の激甚化と頻発化を背景に、電力会社がさらなる破綻に追い込まれる事態を回避する必要があると主張している。
提案内容と各方面からの反発
知事が提案する新たな枠組みには、以下のような措置が含まれている。

* 損害賠償の一部を保険会社がより多く負担するように変更する。 * 10億ドルを超える損害額を伴う山火事が発生した場合、電力会社のCEOのボーナスを没収する。 * 山火事予防要件に違反した場合、株主に最大1,000万ドルの罰金を科す。
しかし、この提案は広範な批判に直面している。損害賠償責任を電力会社から保険会社や地域社会へ転嫁する「救済策(ベイルアウト)」であるとの指摘が相次いでいる。
「エブリ・ファイア・サバイバーズ・ネットワーク」のジョイ・チェン事務局長は、この提案を「カリフォルニアの家族から電力会社幹部やウォール街の株主への、数十億ドル規模の富の移転である」と批判した。また、保険会社や消費者擁護団体、被災者らで構成される連合も、8月11日付の書簡でこの計画に反対を表明。「被災者は電力会社の株主を補助するために利用されるべきではない」とし、賠償責任を免除することは、結果として保険料の上昇や公共サービスの低下を招くと警告している。
議会での期限と今後の見通し
カリフォルニア州議会は8月31日を会期の期限としており、この山火事賠償改革を巡る交渉が最終盤を迎えている。ニューサム知事は、議会が法案を可決しない場合、特別議会を招集する可能性も示唆している。
電力会社側は、法的な枠組みが強化されなければ、将来の投資計画を見直さざるを得ないと警告している。PG&Eのパティ・ポップCEOは、「議会が行動を起こさない場合、我々も自らの行動をとる」とアナリスト向けに発言した。一方で、カリフォルニア州の専門消防士組合は、電力網の安定性と被災者の救済のバランスを考慮し、知事の提案を支持する意向を表明している。
現在、州内の電力・ガス会社は、AIデータセンターの拡大や送電網の強化という課題を抱えており、山火事リスクを巡る債務問題は、州のエネルギーインフラの将来を左右する極めて重要な争点となっている。