台湾とモロッコが発注したF-16C/D Block70/72戦闘機は、世界的な供給網の混乱により納入が大幅に遅延している。台湾には10月2日にようやく2機が到着したが、モロッコ向け初号機もロッキード・マーティンが6日に初飛行を発表した段階であり、両国とも完全な戦力化にはなお時間を要する見通しだ。
モロッコ向けF-16Dが初飛行、納入まで1年以上の公算
モロッコ空軍が発注したF-16C/D Block72も、同様に大幅な納入遅延に直面している。ロッキード・マーティンは10月6日、モロッコ向けのF-16D Block72が初飛行に成功したと発表した。同社はこのマイルストーンを「同機の初納入に向けて飛行試験を進める上で重要」と位置づけているが、実機の引き渡しまでにはさらに1年以上を要する可能性が高い。grandfleet.infoの分析によれば、台湾の先行事例に照らせば、モロッコへの到着は2027年後半になるスケジュール感である。また、Africa Intelligenceは7月、モロッコ政府が遅延を理由にロッキード・マーティンへの賠償を求めていると報じた。
サプライチェーンの混乱と製造拠点の移転
F-16V(Block70/72)の納入遅延は、COVID-19流行による世界的なサプライチェーンの混乱が主因である。ロッキード・マーティンは2017年、F-35の増産に伴い、F-16の最終組立ラインをテキサス州フォートワースからサウスカロライナ州グリーンビルへ移転することを決定した。2019年4月に稼働を開始したこの新ラインには、9ヶ国470社に及ぶ供給網が関与している。IAIが主翼と垂直尾翼、PZLが中央・後部胴体やコックピット構造などを担当しており、この複雑な分業体制がパンデミック下で大きな影響を受けた。
エンジン仕様で異なる機体形状
Block70とBlock72は、搭載するエンジンが異なる。バーレーン、スロバキア、ブルガリア、台湾、ペルーが選択したBlock70はゼネラル・エレクトリック(GE)製のF110を搭載する一方、モロッコが選択したBlock72はプラット・アンド・ホイットニー(P&W)製のF100を搭載している。両エンジンの最大推力は約29,000lbf級で同等だが、空気流量の要求値が異なるため、機首下のエアインテーク形状と大きさに明確な違いがある。モロッコは既存のBlock 52+もF-16V構成へアップグレードする方針であり、空軍の運用機をBlock72に統一する計画だ。
米台の軍事連携を深めるF-16V導入
台湾にとってF-16Vの導入は、軍事的な防衛力の強化にとどまらない。産経ニュースによると、F-16Vの製造は米台の共同プロジェクト的な側面を持っており、台湾は開発資金にも協力している。台湾は139機の既存F-16A/Bを改修済みであり、新規の66機を加えることで世界最大級のF-16V運用主体となる。また、第三国が同機を購入・改修する際に発生するロイヤルティーの一部を受け取る仕組みがあり、2025年末時点で7000万米ドル超の報酬を得ている。志航基地への配備により、台湾東部の防空能力は格段に向上すると期待されている。

今後の納入スケジュールと各国の動向
2026年9月時点で、バーレーン、スロバキア、ブルガリア向けの納入はほぼ完了しているが、台湾、モロッコ、ブルガリアの第2バッチ分は依然として遅延の影響下にある。ペルーも2026年4月に12機を発注しており、さらなる追加発注も計画中だ。各国の空軍は、既存機の近代化改修と新造機の納入を組み合わせることで、戦力維持を図っている。モロッコ空軍が直面する近代化の困難は、UAEからのミラージュ2000-9導入延期など、周辺国の動向も複雑に絡み合っている。各国の調達計画が予定通り進まない中、ロッキード・マーティンがサプライチェーンのボトルネックをいかに解消し、納入ペースを加速できるかが今後の焦点となる。