カナダのカーニー首相は、ニューヨーク・タイムズ紙のインタビューで、米国による軍事力行使の可能性について「検討したことがある」と明かしました。トランプ大統領による関税や貿易協定を通じた主権侵害の試みを容認しない姿勢を鮮明にし、安全保障と経済における米国依存からの脱却を加速させる方針を示しています。
軍事力行使の可能性をめぐる首相の認識
27日に公開されたインタビューにおいて、カーニー首相はトランプ大統領がカナダに対して軍事力を行使する可能性について、真剣に懸念したことがあると認めました。首相は、発生確率は極めて低いものの甚大な影響をもたらす「テールリスク」を検討することが指導者の責務であると強調しています。基本的なシナリオでなくとも、特定の可能性を考慮しないことは無責任であるという見解です。一方で、トランプ大統領とは貿易交渉決裂後も電話会談を行うなど、率直に懸案事項を議論できる良好な関係にあるとも語りました。
主権侵害への強い警戒と対立姿勢
カーニー首相は、米国の関税や投資の約束、広範な貿易協定が国内政策の変更を迫る手段となっていると批判しました。交渉過程で「我々の主権に対する直接的な脅威」を感じたとし、経済的主権を侵害しようとする試みは容認しないと断言しています。国家としての主権を維持するため、米国主導の圧力には毅然と立ち向かう構えです。指導者として、敬意を払いながらも戦うべき場面を見極める重要性を説いています。
米国依存からの脱却とパートナーシップの多角化
経済と安全保障において米国だけに依存する過ちは犯さないと、首相は強調しました。他地域との広範なパートナーシップを築かなければ、脅迫によって身動きが取れなくなる可能性があるためです。具体的な代替案として、米国のスターリンクやF35戦闘機以外への転換を検討しています。特にスターリンクが関係各国の主権と無関係に接続を遮断した事例を挙げ、米国技術への依存を断ち切る必要性を強調しました。
技術と通信分野における自立への道
カナダは2028年に、国内の衛星通信企業であるテレサットが低軌道衛星群を打ち上げる予定です。カーニー首相は、このプロジェクトを軸に韓国や欧州など他のパートナーと連携し、国防において必要な規模を確保する意向を示しました。グローバル金融システムが米ドルに全面的に依存している現状も持続可能ではないとの持論を展開しています。ある出来事を一度目撃してしまえば、以前の状態に戻ることはできないという強い危機感が、この転換を後押ししています。
中国および欧州との新たな経済協力
米国以外との関係深化について、首相は欧州や中国を挙げました。今年1月には、中国と農水産物の輸出や自動車輸入に関する協定を締結したものの、これは限定的なものに留まると説明しています。クリーンエネルギーや金融分野での協力は進める一方、人工知能や国防といった機微な分野では深い協力は行わない方針です。米国と中国の協力関係と比較すれば、カナダの取り組みはごく一部に過ぎないとしています。
中堅国としての戦略と今後の見通し
米国と同盟関係にあるカナダの動向は、同じく中堅国である韓国政府からも注目されています。両国間の統合が強制の手段として悪用される現状において、多角化を推進することは当然の選択であるとカーニー首相は主張しました。今後、カナダは米国との対話を続けつつも、国防や通信のインフラ整備において、米国への依存度を低減させる具体的な政策を推し進める見通しです。自国の能力を強化し、パートナーシップを広げることで、外部からの圧力に屈しない強固な立場を構築しようとしています。