自民党の簗和生氏が5月24日に非公開で行われた同党大田原支部の総会後の懇親会で、栃木県内の自治体に対する令和8年度の道路予算を大幅にカットしたと発言し、地元自治体や関係者から強い反発と不安の声が上がっている。那須烏山市と那珂川町の首長らが2月の総選挙で対立候補を支援したことへの意趣返しではないかとの指摘が出ており、予算削減の対象となった自治体では命に関わる影響を懸念する声が広がっている。
令和8年度予算は本当に大幅カットされていたのか
簗氏は数十名の自民党員らを前にした懇親会で、那須烏山市と那珂川町の令和8年度の道路予算について大幅にカットしたと明言した。具体的には那須烏山市を前年比で64%減の3分の1にし、那珂川町は54%減にしたと語っている。この発言は、自民党の議員に頼っていくらの予算が必要だというところに多く回すのが当たり前という文脈の中で飛び出した。実際のデータを確認すると、その数字は事実と一致していることが判明している。
那珂川町建設課によれば、同町の社会資本整備総合交付金の令和8年度の要望額は7208万円に対し、国土交通省からの内示額は2262万4000万円にとどまった。前年度の要望額6585万3900円、内示額4930万2000円と比較すると、内示額は前年比で約54%の減少となる。もう一方の那須烏山市の建設課も、とちぎの道づくりという項目における今年度の要望額4783万6000円に対し、内示額が2426万7000円であったと回答している。内示額の前年比は約63%減であり、こちらも簗氏が語った数値とほぼ一致する結果となった。
保守分裂の総選挙と首長らの動きが招いた背景
簗氏がこうした発言に至った背景には、2月に行われた衆議院議員総選挙での激しい保守分裂がある。栃木3区から出馬した簗氏は無所属の渡邊真太朗氏に敗れ、比例復活での当選となった。同区に属する那須烏山市や那珂川町の首長らは渡邊氏を支援しており、選挙戦の構図がしこりとして残っていた。自民党関係者は、簗氏の発言は自分に投票しなければどうなるかを知らしめる恫喝と言われても仕方がないと指摘している。
一方で、簗氏は農業政策に明るく、高市首相に農政をレクチャーした間柄としても知られている。2月の総選挙では高市首相が栃木3区に応援演説に訪れ、簗氏を私の知恵袋のやなちゃんとして紹介する場面もあった。旧安倍派出身で裏金議員でもある簗氏の大臣起用に関しては世論の反発を招く懸念もあったが、首相が一本釣りした格好となっている。そうした政治的な力関係や選挙の結果が、今回の予算配分に影を落としていると見られている。
道路予算の削減が直撃する自治体の深刻な実態
予算の大幅な削減により、地域のインフラ整備や住民生活には早くも具体的な弊害が生じている。那珂川町では東部地区の町道である上郷須賀川線の工事が発注できない状況に陥っている。高齢者も多い地域であるため、救急車などの緊急車両の通行を考慮すると、まさに命に関わる道なのですと那珂川町関係者は危機感を募らせる。住民の生活基盤に直結する道路整備が停滞する事態となっている。
こうした状況に対し、簗氏は冒頭の懇親会で命は守らねばなりませんから市民町民のですね、あの、河川の関係は触っていません、道路の、命に支障がないところを削減していますと胸を張っていた。しかし、現場の自治体関係者からは強い怒りの声が上がっている。那須烏山市長の川俣純子氏は、簗先生が本当に自分の選挙区の住民を不安にさせる発言をしたなら、市長としては許せませんと強い不快感を示している。那須烏山市幹部も選挙に負けた意趣返しだとしたら常軌を逸していますと批判を強めている。
今後の見通しと問われる政治資金と予算配分のあり方
選挙の勝敗や首長の支持動向によって国の交付金や予算の内示額が大きく変動している実態が明らかになったことで、地方自治体と国会議員の関係に対する視線は厳しさを増している。命に関わるインフラ整備への影響が指摘される中、国政と地方行政の間に生じた亀裂が今後どのように修復されるのか、あるいはさらなる波紋を呼ぶのかについては、関係者の動向を含めて引き続き注視されている。