大阪地裁は29日、大阪市内で起きた「タイマン」のけんかで重傷を負い、精神障害が残った元高校生の男性に対し、相手の元少年が5000万円を支払うよう命じる判決を言い渡しました。堀部亮一裁判官は、元少年による暴行の危険性を重く見て、原告側の過失相殺を認めませんでした。
大阪地裁が元少年に5000万円の賠償命令
大阪地裁で29日に言い渡された判決は、原告の男性が求めていた5000万円の損害賠償請求を全面的に認める内容となりました。この裁判は、令和4年10月の夜、大阪市内のコンビニエンスストア付近から始まったトラブルが発端です。当時16歳だった原告の男性は、当時17歳だった元少年に「にらんだやろ」と因縁をつけられ、胸ぐらをつかまれた際にネックレスを壊されました。弁償を求めた原告に対し、現場にいた知人男性(当時34)が「タイマンで勝負をつけろ」と指示したことが、事態を深刻化させました。
大和川堤防で起きた凄惨な暴行の経緯
一行は大阪市内の大和川の堤防へ移動し、そこでけんかが行われました。判決によると、元少年は倒れた原告の頭部に対し、約8キロのブロックを2度投げつけるという極めて危険な行為に及びました。この暴行により、原告は頭の骨を折るなどの重傷を負いました。裁判では、この一連の行為が「けんか」の範疇に収まるのか、あるいは原告側にも責任があるのかが争点となりました。堀部裁判官は、当初の当事者双方には激しい争いの意思がなかったと指摘しています。
「なれ合い」のけんかを一変させた第三者の存在
なぜ、単なる口論が重傷事件へと発展したのでしょうか。判決は、現場にいた知人男性の関与を重視しました。知人男性は、その場の雰囲気を「なれ合いに近いけんか」と判断し、元少年に対して「負けたら分かってるな」などと圧力をかけました。この発言が引き金となり、元少年は「勝敗をはっきりつけよう」と決意したといいます。裁判所は、元少年がこの言葉を盲目的に受け入れたことで、突如として危険性の高い暴行に至ったと認定しました。
過失相殺を否定した裁判所の判断理由
元少年側は、けんかという状況下において原告側にも過失があったと主張し、賠償額の減額を求めました。しかし、堀部裁判官は「原告側に激しい暴行の原因はなかった」として、過失相殺を適当でないと退けました。この認定の背景には、双方に殺傷を伴うような激しいけんかの意思がなかったという状況判断があります。結果として、元少年には請求額全額の支払いが命じられ、同時に訴訟を起こしていた原告の母親に対しても、約10万円の賠償が認められました。
重い精神障害と失われた将来の損害
この事件は、原告の男性に深刻な後遺障害を残しました。判決では、原告が事件後に鬱病と診断され、精神障害の認定を受けていることが明らかにされました。高校を中退せざるを得なくなった上に、現在も十分な就労ができない状況が続いています。裁判所は、これに伴う逸失利益や慰謝料などを総合的に算定し、損害額を計5900万円超と認定しました。なお、この事件を巡っては、元少年は既に少年院送致となっており、けんかを促した知人男性も傷害教唆罪で実刑判決を受けています。
