愛知県名古屋市のパロマ瑞穂スタジアムで開催された第20回アジア大会・陸上競技は9月29日に6日目を迎え、午後セッションで男子4×100mリレー決勝が行われた。日本は38秒57をマークし、4大会ぶりとなるメダルに届かない5位に終わった。レース後、選手たちは現実の厳しさと向き合い、それぞれの言葉で今大会を振り返った。
予選と同じオーダーで挑んだ決勝の舞台と5位という結果
日本は予選と同じく、1走に多田修平(住友電工)、2走に小室歩久斗(中大)、3走に桐生祥秀(日本生命)、アンカーに小池祐貴(住友電工)を並べた。予選は38秒71で1着通過を果たしたものの、迎えた決勝では38秒57にとどまった。レース後、スタンドからは力走を見せた4人をねぎらうように大きな拍手が送られた。目指していた頂点、そして最低限取るべきだったメダルを逃したことについて、選手たちはアジアにおける日本の立ち位置を一番理解しているからこそ、悔しさを隠さなかった。多田は地元開催の大会を通じて「全体をとおしてもすごく悔しい気持ちでいっぱいです」と率直に語り、小池も「残念以外の何ものでもない」と唇を噛んだ。
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模索が続いた今季の歩みと金メダルを公言した裏側の葛藤
日本男子4継は、今季に入り苦しい道のりを歩んできた。5月の世界リレーでは上位12ヵ国に与えられる北京世界選手権の出場権を逃し、7月のダイヤモンドリーグ・ロンドン大会では38秒66を記録。さらに、アジア大会直前の9月11日に行われた全日本実業団対抗選手権(オープン参加)では38秒97にとどまっていた。ロンドン大会からは、2001年のエドモントン世界選手権から採用されてきた伝統のアンダーハンドパスからオーバーハンドパスへの変更を試みるなど、試行錯誤の最中だった。決して万全とは言えない流れの中で迎えた大会について、桐生は「金メダルを取りたいと言いながらも、たぶん個人個人で不安があっただろうし、本当に取れるのかという気持ちが選手も、スタッフにもあったと思います」と、苦しい胸の内を明かしている。
2008年北京、16年リオの銀メダルから続く伝統の現在地
08年北京五輪と16年リオデジャネイロ五輪で2度の銀メダルを獲得した日本男子4継は、世界の舞台で輝かしい実績を残してきた。しかし、2019年のドーハ世界選手権で銅メダルを獲得して以降は、世界大会のメダルから遠ざかっている。現代の世界大会で決勝進出へ最低限必要とされる「37秒台」を、日本代表が簡単に出せない状況が続いている。この現状について、桐生は「バトンパスにフォーカスされるけど、結局は走力」ときっぱりと指摘した。その上で、「今の日本が37秒台を出すことが簡単なことではないと思う。今回の結果で選手たちもわかっただろうし、そこは反省しないといけない」と、個々の走力強化の必要性を強調した。
若手の台頭とベテランの覚悟が示す日本スプリント界の未来
中学の頃からテレビで見てきた憧れの先輩たちと一緒に走った大学2年の小室は、「悔しい気持ちでいっぱい。自分の理想のところとはちょっと離されてしまいました」と振り返りつつ、「またこの舞台に帰ってきた、リベンジを果たしたい」と力強く次世代への継承を誓った。小池も「必要な部分をしっかりと伝えることが、僕らの世代のやるべきこと」と語る。一方で、桐生は若手の台頭を歓迎しつつ、「僕らベテランも若手と勝負しながら、そこに負けないようにしたい」と前を向く。日本スプリント界全体が激しく切磋琢磨し、全体のレベルを少しずつ引き上げていくことこそが、かつての強さを取り戻すための最善の道となる。
次世代へのバトン継承とリベンジへ向けた新たな出発
今大会の5位という結果は、日本スプリント界にとって決して小さくない現実をつきつけるものとなった。しかし、若手からベテランまでがそれぞれの立場から現状の課題を受け止め、次の舞台を見据えている。大学2年の小室が示したリベンジへの強い意志や、ベテラン陣が語る切磋琢磨の重要性は、今後の日本チームの基盤となる。伝統のバトンパスの精度向上と、世界と互角に渡り合うための走力アップという二つの課題をクリアするため、選手たちは再び前を向いて歩み始める。