ドナルド・トランプ大統領は2026年8月10日、イランに対し、過去数十年にわたる米軍兵士の死亡やイラン国内の抗議者犠牲者に対する賠償金を支払うよう要求した。この要求は、ホルムズ海峡の再開に向けた交渉が難航する中で、トランプ氏が対イラン圧力を強める姿勢を示したものだ。
賠償要求の背景とトランプ大統領の主張
トランプ大統領は、イラン側の交渉担当者が過去5カ月にわたる戦争で被った損害に対する賠償を求めていることに対抗し、Truth Socialへの投稿でこの要求を表明した。トランプ氏は「今、私も同様にイランに対し、彼らが路上の爆弾や多くの紛争で殺害し、重傷を負わせたすべての人々に対する賠償を要求している」と述べた。同氏は、かつてカセム・ソレイマニ将軍が主導した攻撃や、2000年の米艦コール襲撃事件、および「戦闘で殺害された数千人」の犠牲者を名指しした。
「さらに、イランが過去50年間に殺害した数十万人の無実の抗議者の家族に対し、賠償が支払われるべきである。直近の5カ月間で殺害された5万2000人は言うまでもない」 ドナルド・トランプ大統領(Truth Socialへの投稿より)
トランプ大統領は、この要求を「あらゆる今後の交渉にしっかりと盛り込むよう」代表団に指示したと述べている。さらに、交渉の範囲を広げ、「イランはレバノン、シリア、イエメン、ガザの人々に与えた損害と死に対しても責任を負うべきだ」と主張した。
ホルムズ海峡交渉の停滞と経済的圧力
この賠償要求は、オマーンで進められていたホルムズ海峡再開に向けた交渉が膠着状態にある中でなされた。ホルムズ海峡は、2月末に米国とイスラエルがイランに対して共同攻撃を開始するまで、世界の石油取引の20%が通過していた要衝である。イラン側は米国が特定の条件、特にイランへの賠償金支払いに応じない限り、再開合意には同意しないとの姿勢を示している。
トランプ氏は8月9日のAxiosとの電話インタビューで、米国はイランへの新たな軍事行動を一時保留し、経済的圧力がどの程度機能するかを見守る準備があると示唆した。これは8月3日にイランに対し、平和合意に応じるか「斬首」のリスクを負うかの最後通牒を突きつけた時とは大きく異なる姿勢である。「我々は低姿勢で対応している」とトランプ氏は語り、「我々はイランと半ば交渉しているに過ぎない。巨大なインフレと資金不足という現状をただ見守っている」と述べた。なお、2月初旬の開戦以来、イランとの紛争に関連する攻撃で少なくとも18人の米軍兵士が死亡している。
イスラエルとの関係と中東紛争の複雑化
トランプ氏の外交努力は、イランだけでなく、ガザやレバノンといった地域紛争の終結にも向けられている。しかし、イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相は、トランプ氏が支持する「平和委員会」による15項目の和平計画を拒否した。ネタニヤフ氏は、ガザからの撤退にはハマスの完全な武装解除が不可欠であると強調している。
「我々を説教するすべての者とは異なり、我々はイスラエルの安全保障のために必要なことを行う。そして我々は、親しい友人であっても、必要な時には自分たちの立場を貫くことを知っている」 ベンヤミン・ネタニヤフ首相
これに対しトランプ大統領は、ホワイトハウスでの記者団の質問に対し、ネタニヤフ氏との関係は非常に良好だと回答し、直接的な批判は避けた。しかし、中東における複数の紛争を11月の中間選挙前に終結させようとする米国の計画は、依然として不安定な状態が続いている。