ケンブリッジ大学のジェイソン・アーデイ教授が、自身の経歴や学術的実績をめぐる一連の疑惑を受け、辞任を表明した。2023年に同大学で史上最年少の黒人教授として教育社会学のポストに就任し、大きな注目を集めていたアーデイ氏だが、現在は盗作疑惑や経歴詐称の疑いにより激しい批判にさらされている。
相次ぐ盗作疑惑と学術的整合性
アーデイ氏をめぐる疑惑は、元ケンブリッジ大学の研究者ネイサン・コフナス氏が、自身のブログで博士論文の盗作を指摘したことから本格化した。コフナス氏は、アーデイ氏が2015年にリバプール・ジョン・ムーア大学で取得した博士論文を盗作検知ソフトで調査した結果、他者の出版物と大幅な重複があると主張した。
これに対し、リバプール・ジョン・ムーア大学は調査を実施したが、盗作の事実は認めず、「誠実かつ合理的な誤り」であったとの判断を下した。しかし、その後も複数の学術誌で2018年および2020年に発表された論文において、出典の欠如により訂正を余儀なくされる事態が発生した。アーデイ氏は、自身の発達障害や学習障害、また当時の指導体制の不備が背景にあったと釈明している。
経歴詐称と誇張の指摘
学術的な不正に加え、アーデイ氏の職歴や実績についても虚偽の疑いが浮上している。同氏がケンブリッジ大学ジーザス・カレッジのウェブサイトに掲載していた客観的な職歴のうち、グラスゴー大学やオハイオ州立大学での客員教授経験について、両大学側が「そのような事実は一切ない」と否定する事態となった。

さらに、チャリティ活動で500万ポンドを集めたという主張や、自身の両親の家に豚の頭が送りつけられたとするエピソード、さらには大学内でナイフで脅されたとする被害報告についても、メディアや関係者から疑義が呈されている。特に大学内での脅迫事件については、防犯カメラに記録がなく、警察や大学への公式な通報も行われていなかったことが報じられている。
大学側の調査と今後の対応
ケンブリッジ大学は当初、アーデイ氏を擁護する姿勢を見せていたが、8月5日に「新たな情報」が判明したとして、学術資格や名誉職に関する調査を開始すると発表した。これを受け、同大学はシニアアカデミック職の任命プロセス全体を見直す方針を固めている。

ケンブリッジ大学のプリヤンヴァダ・ゴパール教授をはじめとする学内グループは、大学が自浄作用を欠いたまま内部調査を行うことへの懸念を表明しており、外部の有識者を含む独立した調査委員会の設置を求めている。また、アーデイ氏が以前所属していたグラスゴー大学も、同様に任命プロセスの検証を行うための調査を立ち上げている。
辞任の背景と今後の影響
アーデイ氏は水曜日の夜、自身の辞任を公表した。声明の中で同氏は、「批判は避けられないものだが、私が経験したことは学術的な意見の相違を遥かに超えている」とし、執拗な告発や憶測が本人や家族に深刻な打撃を与えたと説明した。一方で、この辞任は「自分を取り巻く物語を認めたものではない」と強調している。