米連邦控訴裁判所(ワシントンD.C.)は、ホワイトハウスの敷地内に計画されている4億ドル規模の舞踏会場建設を差し止める決定を下しました。裁判所は、議会の承認なしに大統領が独断で建設を進める権限はないと判断し、歴史的建造物の保護を訴える団体側の主張を支持しました。
議会承認なき建設に対する司法判断
今回の決定は、パトリシア・ミレット判事、ブラッドリー・ガルシア判事、そしてネオミ・ラオ判事による3人のパネルによって下されました。2対1の票決により、ミレット判事とガルシア判事が多数派を形成し、建設差し止めを支持しました。なお、ラオ判事は反対意見を表明しました。
多数派意見を執筆したミレット判事とガルシア判事は、ホワイトハウスを「国民の家」と定義し、その管理権限は議会にあると強調しました。判決文では、「大統領には、現在および将来のすべての大統領、そしてアメリカ国民のために設計・維持されているその資産に対する憲法上の権限はなく、またそのような主張もしていない」と指摘されています。さらに、多数派は「巨大な舞踏会場を建設すべきかどうかは議会が決定すべきことであり、行政による独断で行うことではない」と断じました。
歴史的建造物の取り壊しと法廷闘争
裁判所は、昨年10月にホワイトハウスの東翼(イーストウィング)が取り壊された経緯についても言及しました。判決文には以下の記述があります。「大統領が、議会が建設を許可し、アメリカの納税者がその費用を支払ったホワイトハウスの重要な部分を、私的に集めた資金を使って一方的に取り壊したという事例は、我々の知る限りアメリカ史上存在しない。今までを除いて。」
ナショナル・トラスト・フォー・ヒストリック・プレザベーション(全米歴史保存トラスト)は、東翼が取り壊された1週間後の2025年12月に、このプロジェクトを阻止するために提訴しました。このプロジェクトは、トランプ氏によれば999人を収容できる規模で、過去70年以上で最大規模のホワイトハウスの構造変更となるとされています。
今回の控訴審判決は、リチャード・レオン連邦地方裁判所判事が今年4月16日に下した仮処分を支持するものです。レオン判事は、地上での建設作業の停止を命じつつも、地下のバンカーやその他の「国家安全保障施設」に関する作業については継続を認めていました。ナショナル・トラストのブレント・レッグス会長は、この判決について「我々の国にとって、そしてホワイトハウスを含む大切にされている歴史的な場所について意見を述べるアメリカ国民の権利にとって素晴らしい日だ」と評価しています。
「国家安全保障」をめぐる主張の対立
トランプ陣営は、この90,000平方フィート(約8,400平方メートル)の舞踏会場プロジェクトについて、単なる宴会場ではなく、爆弾シェルター、医療施設、ドローンやミサイルからの防護機能など、国家安全保障のための不可欠な要素が含まれていると主張してきました。6月5日の控訴審の弁論において、司法省のヤアコフ・ロス弁護士は、裁判所が私的に資金調達されたプロジェクトを評価する役割は持っておらず、ナショナル・トラスト側の「建築上の好み」が国家安全保障上の懸念に優先されるべきではないと主張しました。

しかし、控訴裁の多数派は、国家安全保障を理由にした主張が法を無視する免罪符にはならないと退けました。判決では「国家安全保障上の議論は、法を免れるための自動的な切符ではない」と明記されています。また、この判決は、舞踏会場の建設が望ましいかどうかという政策的判断を下すものではなく、あくまで「議会の承認」という法的手続きを欠いている点を問題視しています。
最高裁への上訴と今後の見通し
裁判所は、トランプ政権が連邦最高裁判所へ上訴できるよう、14日間の執行猶予期間を設けました。ドナルド・トランプ氏は自身のSNS「Truth Social」において、この判決を「恐ろしく、政治的に動機づけられた、不法な判決」と強く非難しました。同氏は、この ruling(判決)がホワイトハウスの複雑な警備体制を脅かす国家安全保障上のリスクであると主張し、直ちに最高裁へ上訴する意向を表明しました。
控訴審の dissent(反対意見)を述べたラオ判事は、下級裁判所による建設差し止めの仮処分は「連邦裁判所の本来の権限を超えている」と述べ、建設の継続を認めるべきだと主張していました。一方で多数派は、最高裁への上訴までの間、地上部分の建設作業を停止させることで、歴史的、建築的、および美学的な利益に対する「永続的かつ不可逆的な損害」を防ぐ必要があるとしています。この論争は、ホワイトハウスという国家の象徴を舞台に、大統領の権限と憲法上の法的手続きをめぐる重要な対立点として最高裁の判断を待つことになります。