2025年に月面着陸ミッションを支援したSpaceX社のFalcon 9ロケットの上段(第2段)が、2026年8月5日に月面に衝突すると予測されています。この物体は「2025-010D」と指定されており、地球の近傍を回る不安定な軌道に入った後、重力によって月への衝突コースに入ったとされています。
SpaceXのFalcon 9ロケット上段が2026年8月に月面へ衝突へ
衝突は月面の地球に常に面している「表側」の、アインシュタイン・クレーター付近で起こる見込みです。月には大気がないため、ハードウェアが衝突前に燃え尽きることはなく、音速の7倍以上の速度で月面に激突すると予測されています。
衝突の背景とロケットの正体
このロケット上段は、2025年1月15日にフロリダ州のケネディ宇宙センターから打ち上げられたもので、Firefly Aerospace社が開発した無人月面着陸機「Blue Ghost-1」およびispace社の「Hakuto-R Resilience」を月へ運ぶ役割を担っていました。Blue Ghost-1は3月に月面に到達し、約14地球日に相当する1月分の月日(lunar day)にわたって運用されました。
ミッション完了後、この45フィート(約13.7メートル)の長さで重量8,800ポンド(約4トン)の上段部分は、地球への帰還や深宇宙への移動に必要な燃料を欠いており、地球を26日で1周する軌道に留まっていました。その後、独立した天文学者がProject Plutoソフトウェアを用いた追跡と地上望遠鏡の観測に基づき、月への衝突コースにあることを予測しました。
予測される衝撃とクレーターの規模
最新の論文によると、衝突時の運動エネルギーは11.8ギガジュール、運動量は9.7メガニュートンに達するとされています。これはTNT約2.8メトリックトンのエネルギーに相当します。また、まだ査読前段階の研究ではありますが、この衝突によって幅66フィートから98フィート(約20〜30メートル)の新たなクレーターが形成される可能性が示唆されています。
衝突の影響については、以下の点が指摘されています。
- 噴出物の拡散: 解決された粒子の最大弾道範囲は1,000km弱に及ぶと予測されており、これは将来の月面インフラや宇宙飛行士にとって重大なリスクとなる可能性があります。
- 視認性の課題: 地上望遠鏡での観測は困難な可能性があります。自然な衝突体よりも速度が遅いため、フラッシュの明るさが非線形に低下し、相対的に暗くなるためです。
科学的価値と今後の観測計画
テキサス大学オースティン校のWilliam Jo氏らは、このイベントが「噴出物プルーム(ejecta-plume)」の科学を解明し、モデルを校正する稀な機会になると強調しています。人工物である使い古されたロケット上段は中空の構造であり、小惑星や彗星などの自然な衝突体とは異なるプルームを形成すると考えられています。Jo氏は、衝突直後のサブ秒単位のフラッシュよりも、その後に続く噴出物の追跡にこそ科学的な価値があると述べています。
また、NASAのゴダード宇宙飛行センターのBrent Garry氏によると、月周回衛星「ルナー・リコネサンス・オービター(LRO)」が、衝突の約7日前と7日後に予測衝突地点の上空を通過する予定です。これにより、衝突後のサイトについてより詳細な情報を得られる可能性があります。
ロスアラモス国立研究所のBenjamin Fernando氏らの研究では、衝突時のフラッシュと噴出物プルームが、地上および宇宙ベースの観測施設から「潜在的に観測可能」であると報告されています。