料理界の巨星、アンソニー・ボードワン(Anthony Bourdain)の青年時代を描いた伝記映画「Tony」が公開されました。本作は、ボードワンが1975年にマサチューセッツ州プロビンスタウンのレストラン厨房で初めて働いた、形成期となるある夏を舞台にした成長物語です。
19歳の「迷える青年」としてのボードワン
映画「Tony」は、ボードワンが2000年に出版したベストセラー回顧録『Kitchen Confidential』の初期の章を緩やかにベースにしています。物語の主人公である19歳のトニー(ボードワンの当時の呼称)は、大学を中退し、自らを甘やかされ、惨めで、自己中心的で、自暴自棄で、思慮のない若造と評したボードワン自身の記述を体現する人物として描かれています。
プロビンスタウンでの転機と料理への没頭
物語の主要な舞台は、ケープコッドにあるプロビンスタウンです。トニーは到着後すぐに、憧れの相手に恋人がいることを知り、酔っ払って店員に言い寄ったことでレストランを追い出され、路上で全財産を盗まれるという不運に見舞われます。

制作陣とキャストの挑戦
監督を務めたのは、カナダ人映画製作者のマット・ジョンソン(Matt Johnson)です。ジョンソンは『Blackberry』や『Nirvanna The Band the Show the Movie』などで知られ、本作では共同製作者および共同脚本家(Matthew Miller、Todd Bartels、Lou Howeと共同)としても参加しました。なお、ジョンソンが俳優として出演しないのは、自身の監督作品として初めてのことだといいます。
主演のドミニク・セッサ(Dominic Sessa)は、70年代風のモップヘアとサイドバーンを蓄え、怒りを孕んだ「飢えた犬」のような佇まいで、内なる葛藤を抱えるトニーを演じています。Variety誌は、セッサが本作を通じて映画スターとしての資質を示したと評価しています。
作品への評価と論点
本作に対する評価は分かれています。Variety誌は、ボードワンの妥協のない精神に忠実であり、彼自身が好むであろう水準をクリアしていると評しています。一方で、AP Newsは、ボードワンが後に世界的な料理の語り手へと転換する過程や、彼自身のヘロイン使用などの重要な側面が描かれていない点に不満を示しています。

また、脚本面では、実在の人物に基づきながらも、新しい料理のメンターを創造したり、17世紀のシェフであるフランソワ・ヴァテルや「罪を食う者(sin eaters)」への言及を加えたりといった、映画的な演出がなされています。AP Newsは、劇中の大規模な厨房火災などのシーンについて、ハリウッド的なアクション映画のような演出であると指摘しています。
作品概要まとめ
| 監修と共有脚本 | マット・ジョンソン(スレート) |
|---|---|
| 主演(トニー役) | ドミニク・セッサ(Dominic Sessa) |
| 共演(チロ役) | アントニオ・バンデラス(Antonio Banderas) |
| 舞台・時代 | 1975年 マサチューセッツ州プロビンスタウン |
| ベース作品 | 回顧録『Kitchen Confidential』(2000年) |