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2025-11-13 02:05:00
前編の記事「『AIがSaaSを殺す』の大きな誤解」に引き続き、この記事ではセールスフォースとアドビがAI大手に立ち向かう「無力化戦略」を取り上げます。
「AIがSaaSを殺す(AI kill SaaS)」という言葉が、まるで決定事項のように語られていますが、それは本質を見誤った短絡的な煽り文句だ、という話を前回しました。
私の見立てでは、AIはSaaSを殺しません。ただし、AIによってSaaSは「溶融」し、バラバラに解体していくでしょう。
では、溶けたSaaSはどんな「コンテキスト」を核に「再結晶化」するのか。実は、トップのSaaS企業では既にその実例が出てきています。
セールスフォースとアドビは自ら「SaaSを分解」してきた

この動きを最も象徴しているのが、セールスフォースとアドビの最新の発表です。
- セールスフォースの「Agentforce 360」
- アドビの「AI Agents」と「Brand Concierge」
彼らは、もはや「SaaSのUI」だけで競争していません。彼らは自らUIを捨て、AIエージェントに業務を実行させる「ワークフローの極北」にしています。
彼らが汎用AGI(OpenAIやグーグル)に勝てると信じる根拠。それこそが「プライベートコンテキストの極北」です。
- セールスフォースの「Data Cloud」 = 「顧客データ」という最強のコンテキストの要塞。
- アドビの「AI Foundry」 = 「ブランドアセットと顧客体験データ」という最強のコンテキストの要塞。
「汎用AIは、我々の持つプライベートコンテキストなしにビジネス価値を生まない」と、彼らは考えているのではないでしょうか。
この再結晶化をめぐって、テック業界は新たな競争に入ると考えられます。
これは私の造語ですが、コンテキストには、B2B市場の巨大プレーヤーのような「重いコンテキスト」と、B2C/C2Cサービスのような「軽いコンテキスト」があります。
それぞれ企業名を挙げつつ、2つの覇権争いの視点で解説します。
(1)B2Bの覇権:セールスフォース vs. マイクロソフト/HubSpot(CRM)
セールスフォースは「顧客データ(CRM)」という、「重いコンテキスト」を握っています。しかし、ここには最強の巨人がいます。
ライバル:マイクロソフト(最強の業務コンテキスト覇者)
マイクロソフトの戦略は、「Dynamics 365(CRM)」と「Microsoft 365(Teams, Outlook)」という2大コンテキストを「Copilot」で融合させる、最強の垂直統合です。
ライバル:HubSpot(SMB・使いやすさ)
HubSpotは、中小企業(SMB)向けの「使いやすいコラボレーション・コンテキスト」をAIで固めています。
セールスフォースの危機と活路:
セールスフォースの最大の脅威はマイクロソフトではないでしょうか。セールスフォースが「CRMデータ(結果)」しか持たないのに対し、マイクロソフトは「日々の業務(メール、会議、チャット)」という、より膨大でリアルタイムな「コラボレーション・コンテキスト」を握っています。AIの賢さにおいて、「コンテキストの量」で負ける可能性があるのです。
セールスフォースの活路は、マイクロソフトの物量に負ける前に、「Agentforce 360」で顧客をロックインし、「CRM特化AI」としての専門性で逃げ切ることにあるように見えます。


(2)B2Cの覇権:モバイル動画市場
アドビは、B2Bとは全く異なるもう一つの戦線を開きました。それがB2C/C2Cのモバイル動画市場という「軽い」コンテキストです。

B2Cはモバイル動画が主戦場の1つでしょう。UGC(ユーザー生成コンテンツ)がトレンドを作っていきます。この「軽いコンテキスト」では、ライフスタイルや悩みの解決ではなく、トレンドの増幅、二次創作の連鎖にうまく組み込まれることが大切です。
そういう意味ではCapCutをTikTokが持っているのは非常に強いところです。
OpenAIのSoraはおそらく、この構造を理解していて、だからこそ「Remixボタン」がある。動画の顔を変えて、猫を増やして、などテイストメイキングができるようにしています。バイトダンスへの対抗として、SoraもSNS分野で相乗りができるようにしてきたのは興味深い展開です。
こうした流れを背景に、今回のAdobe MAX 2025ではPremiere MobileがYouTubeと連携し、二次創作によるバイラル・ループの争いに参画 してきました。
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