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世界で戦えない日本の養殖業。26歳の連続起業家が長崎から「日本の水産養殖」を儲かる産業にする | Business Insider Japan

水産物にも「持続可能性」が求められている。 撮影:三ツ村崇志 「これまで儲からない産業だと言われていた養殖業を、儲かる産業にしたい」 長崎大学発スタートアップBooonの橋爪海CEO(26)さんは、Business Insider Japanの取材にそう語る。 Booonは、食材を加工したときに出る生ゴミや、余った弁当などの食品廃棄物を使って昆虫・ミルワームを飼育。魚の養殖用のエサとして販売するエコシステムの構築に挑戦している、長崎を拠点にしたスタートアップだ。 橋爪さんは、弱冠26歳ながら2022年5月に設立したBooonで3社目の起業となる連続起業家。長崎という地域に根ざしながら、世界を見据える。2023年11月には、Business Insider Japanが持続可能な社会の実現とビジネスの両立に取り組む企業を表彰する「Beyond Sustainability(ビヨンド・サステナビリティ)2023」でも、環境部門を受賞した。 橋爪さんのこれまでの道のりと、Booonが目指す世界を聞いた。 答えられなかった「事業をやる理由」 Booonの橋爪海CEO。拠点は長崎にあるが、東京には度々足を運ぶことがあるという。Business Insider Japanのオフィスで取材に応じた。 撮影:三ツ村崇志 「3社の起業を通じて、たくさんの失敗をしました。事業の落とし穴をたくさん経験したうえで今があります」(橋爪さん) 橋爪さんが最初に起業したのは2019年。長崎大学経済学部2年生だった頃、事業アイデアを考える講義から発展した人材系のビジネスを立ち上げた。ただ、「社会人と学生が交流できる学習ラウンジを運営する」という事業モデルは、直後のコロナ禍であっという間に崩れ去った。 橋爪さんはその後、起業家の友人が立ち上げたPCR検査センターの運営を手伝いながら、「会社が出来上がっていくさまや、ビジネスを学ばせてもらいました」という。 実はこのビジネスに携わる中で、橋爪さんの起業スタンスにつながるある出来事があった。 「京都でPCR検査センターをフランチャイズで立ち上げようと話を進めていた中で、『なんで君がこの土地でこの事業をやるのか』と言われて……。答えることができなかったんです。実際、僕がやらなければならない理由はなかった」 結局、PCR検査センターの立ち上げは見送りに。橋爪さんも長崎に帰ることになった。 2020年以降、さまざまな事業者がPCR検査センターを設立していた( 写真はイメージです。橋爪さんが運営を手伝っていた店舗ではありません) 。 スタニスラフ小菊 / SOPA Images/Sipa USA その後、橋爪さんが次の挑戦を探る中で目を向けたのが、長崎の地域としての強みをビジネスに生かすことだった。 「東京や関西、海外など、外の地域から長崎にお金を引っ張ってくる製品をつくりたいと思うようになったんです」(橋爪さん) こうして大学卒業前後にかけて仲間とともに立ち上げたのが、陸上養殖用の生産ポットの開発・製造を目指すPUKPUKだった。橋爪さんの2社目の起業である。 PUKPUKでは、長崎県内の事業者が持つ独自の養殖手法を生かし、差別化できる陸上養殖システムを開発している。橋爪さんは長崎大学の職員として働きながら、事業の構築を進めていた。ただ、当時すでに陸上養殖用の生産ユニットの製造で注目される企業が現れ始めていたことに加えて、長崎という立地から全国、世界に展開する難しさも肌で感じることに。 その中で見つけたのが、今Booonが取り組む魚の「飼料」という領域だった。 需要はあるのに競争力がない日本の養殖業 FAO(国際連合食糧農業機関)の統計では、世界的に魚の消費量が大幅に伸びることが予想されており、それに伴い養殖需要の高まりが想定されている。その中では当然「おいしい魚を食べたい」というニーズも強い。近年では天然物よりもおいしい養殖魚を育てることが可能になってきていることもあり、水産大国日本としても養殖産業に対する期待は大きい。…

世界で戦えない日本の養殖業。26歳の連続起業家が長崎から「日本の水産養殖」を儲かる産業にする | Business Insider Japan

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2024-02-20 01:55:00

水産物にも「持続可能性」が求められている。

撮影:三ツ村崇志

これまで儲からない産業だと言われていた養殖業を、儲かる産業にしたい

長崎大学発スタートアップBooonの橋爪海CEO(26)さんは、Business Insider Japanの取材にそう語る。

Booonは、食材を加工したときに出る生ゴミや、余った弁当などの食品廃棄物を使って昆虫・ミルワームを飼育。魚の養殖用のエサとして販売するエコシステムの構築に挑戦している、長崎を拠点にしたスタートアップだ。

橋爪さんは、弱冠26歳ながら2022年5月に設立したBooonで3社目の起業となる連続起業家。長崎という地域に根ざしながら、世界を見据える。2023年11月には、Business Insider Japanが持続可能な社会の実現とビジネスの両立に取り組む企業を表彰する「Beyond Sustainability(ビヨンド・サステナビリティ)2023」でも、環境部門を受賞した。

橋爪さんのこれまでの道のりと、Booonが目指す世界を聞いた。

答えられなかった「事業をやる理由」

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Booonの橋爪海CEO。拠点は長崎にあるが、東京には度々足を運ぶことがあるという。Business Insider Japanのオフィスで取材に応じた。


撮影:三ツ村崇志

「3社の起業を通じて、たくさんの失敗をしました。事業の落とし穴をたくさん経験したうえで今があります」(橋爪さん)

橋爪さんが最初に起業したのは2019年。長崎大学経済学部2年生だった頃、事業アイデアを考える講義から発展した人材系のビジネスを立ち上げた。ただ、「社会人と学生が交流できる学習ラウンジを運営する」という事業モデルは、直後のコロナ禍であっという間に崩れ去った。

橋爪さんはその後、起業家の友人が立ち上げたPCR検査センターの運営を手伝いながら、「会社が出来上がっていくさまや、ビジネスを学ばせてもらいました」という。

実はこのビジネスに携わる中で、橋爪さんの起業スタンスにつながるある出来事があった。

「京都でPCR検査センターをフランチャイズで立ち上げようと話を進めていた中で、『なんで君がこの土地でこの事業をやるのか』と言われて……。答えることができなかったんです。実際、僕がやらなければならない理由はなかった」

結局、PCR検査センターの立ち上げは見送りに。橋爪さんも長崎に帰ることになった。

2020年以降、さまざまな事業者がPCR検査センターを設立していた。( 写真はイメージです。橋爪さんが運営を手伝っていたわけではありません)


2020年以降、さまざまな事業者がPCR検査センターを設立していた( 写真はイメージです。橋爪さんが運営を手伝っていた店舗ではありません)
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スタニスラフ小菊 / SOPA Images/Sipa USA

その後、橋爪さんが次の挑戦を探る中で目を向けたのが、長崎の地域としての強みをビジネスに生かすことだった。

「東京や関西、海外など、外の地域から長崎にお金を引っ張ってくる製品をつくりたいと思うようになったんです」(橋爪さん)

こうして大学卒業前後にかけて仲間とともに立ち上げたのが、陸上養殖用の生産ポットの開発・製造を目指すPUKPUKだった。橋爪さんの2社目の起業である。

PUKPUKでは、長崎県内の事業者が持つ独自の養殖手法を生かし、差別化できる陸上養殖システムを開発している。橋爪さんは長崎大学の職員として働きながら、事業の構築を進めていた。ただ、当時すでに陸上養殖用の生産ユニットの製造で注目される企業が現れ始めていたことに加えて、長崎という立地から全国、世界に展開する難しさも肌で感じることに。

その中で見つけたのが、今Booonが取り組む魚の「飼料」という領域だった。

需要はあるのに競争力がない日本の養殖業

FAO(国際連合食糧農業機関)の統計では、世界的に魚の消費量が大幅に伸びることが予想されており、それに伴い養殖需要の高まりが想定されている。その中では当然「おいしい魚を食べたい」というニーズも強い。近年では天然物よりもおいしい養殖魚を育てることが可能になってきていることもあり、水産大国日本としても養殖産業に対する期待は大きい。

世界の養殖魚需要は、1980年代ごろから継続的に成長している。

世界の養殖魚需要は、1980年代ごろから継続的に成長している。

画像:FAO

ただ、魚の養殖にはエサとしてイワシなどの小魚を粉にした「魚粉」を使うことが一般的だ。世界で養殖需要が高まったことで、魚粉は高騰を続けている。

海外展開を見据えるにしても大きな壁があった。

海外では日本以上に環境負荷・生物資源への負荷に対する意識が強く、海洋資源を直接獲った「天然物」を輸出することは難しい。養殖魚を輸出しようにも、トレーサビリティのない(環境負荷の高い)魚粉や、絶滅危惧種のクロマグロの魚粉などで育てられた養殖魚は、欧米では好まれない。現状では日本の養殖産業に世界的な競争力がない状況なのだ。



アメリカ・ボストンのスーパーで撮影した鮮魚。Sustainably wild caughtという表示がある。アメリカでは持続可能な漁業への注目が高まってきているという。


アメリカ・ボストンのスーパーで撮影した鮮魚。Sustainably wild caughtという表示がある。アメリカでは持続可能な漁業への注目が高まってきているという。


画像:Booon


「日本の養殖業の問題を知るつれ、もっと日本の養殖業者が利益をしっかりと出して事業を続けられるように、エサの課題をまず解決したいという思いが強くなりました。もし、魚粉を使わず育てた日本産の養殖魚を輸出できるようにすれば、日本の養殖業の活性化につながると考えたんです」(橋爪さん)

当時PUKPUKの新事業として飼料に取り組むという選択肢もあった。ただ、事業が順調に回り始めたタイミングだったこともあり、共同創業者らからは同意が得られなかった。

「でも、こっち(飼料)の方が先だと思ったんです」

こうして橋爪さんはPUKPUKを離脱。たまたま長崎大学に事業化シーズを探しに来ていた元オイシックス、現カラビナテクノロジー代表の福田裕二さんと意気投合し、3社目となるBooonを共同創業した。

これが2022年の5月のことだった。

スーパーに並ぶ養殖魚にASC認証マーク

日本のスーパーに並ぶ海外産の養殖魚に「ASC認証」がラベリングされている事例があった。ASC認証は、水産養殖における国際的な認証だ。

撮影:三ツ村崇志

魚粉の価格高騰にブランド化…昆虫飼料の勝ち筋

養殖産業では、長らく魚粉に代わる飼料が求められ続けていた。魚粉の使用比率を下げて残りを植物性タンパク質で補おうとしている養殖業者もいる。ただ、動物性タンパク質で育てることで生み出せるおいしさもある。

当たり前の話かもしれないが、エサによって最終的な製品(養殖魚)の品質は大きく変わる。愛媛県がみかんの皮を飼料に混ぜて養殖した「みかんブリ」をブランド化しているように、差別化にもつながる。

「飼料をコントロールすることで魚自体をもっとおいしく作れるんじゃないかと思ったんです」(橋爪さん)

そこでBooonが目をつけたのが「昆虫」を飼料にすることだった。

魚粉はその名の通り、小さな魚などを加工して作られる。

魚粉はその名の通り、小さな魚などを加工して作られる。

ナパット/Shutterstock.com

魚粉の代わりに昆虫を使うという発想自体は昔からあった。ただ、かつては昆虫の飼育コストの高さなどもあり、参入を検討していた商社も事業を見送っていた状況だった。

ただ、その後魚粉の価格は高騰。いまでは当時に比べて1.5倍ほどの価格になった。さらに日本の中でも温暖な九州であれば、飼育コストの大半を占める熱コストの比重も欧米と比べて軽い。しかも全国の養殖業者の半分は九州にある。「九州でやること」に大きな意味があった

「今なら収益化できると思ったんです」(橋爪さん)

折しも、大学職員をしていた橋爪さんのもとに、長崎大学の環境科学部で昆虫の生態などを研究している服部充准教授から、会社を作れないかと相談が持ち掛けられた。その際に逆に服部准教授にアドバイスを求めてみたところ、現在Booonが飼育を進めている「ミルワーム」を飼料の候補として勧められた。

ミルワームは、甲虫の幼虫やさなぎで、国内でもペットショップでハリネズミや鳥、爬虫類などのエサとしてすでに売られている。コオロギなどのように飛んで逃げる心配もなく、棚に飼育ケースを並べて、多層的に飼育することもできる。狭い面積で大量に飼育することにも適していた。加えてミルワームを飼料として使うことで、魚の発色が良くなったり、免疫が高まったりするような「機能性飼料」としての期待もあるという。

#世界で戦えない日本の養殖業26歳の連続起業家が長崎から日本の水産養殖を儲かる産業にする #Business #Insider #Japan

執筆者について: nipponese

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