文部科学省は22日、2030年度以降に小中高で導入されるデジタル教科書の運用指針となる「大臣指針」の素案を公表した。紙の教科書を基本としつつ、デジタルを補助的に組み合わせる「ハイブリッド形式」を標準とする方針で、完全デジタル化は小5以上の特定教科に限定する。
ハイブリッド形式を標準とする新たな教科書運用
文部科学省の有識者会議で22日に示された「大臣指針」の素案は、2030年度以降の学校教育における教科書のあり方を規定するものである。同省は、紙を中心とした学習環境を維持することを大原則に掲げた。読売新聞によると、教科書は「紙とデジタルのハイブリッド」「完全デジタル(デジタルのみ)」「紙のみ」の3形態から教育委員会や学校長が選択する形となる。
ハイブリッド形式については、全ての学年と教科において中心的な役割を担うと位置付けられた。ただし、デジタル部分はあくまで「補助的・補完的」な活用にとどめる。授業の流れは紙の教科書を軸に進められ、学習用端末を使って紙面に掲載されたQRコード(2次元コード)を読み取り、動画を視聴するといった連携が想定されている。

小学4年生以下におけるデジタルの制限
児童の認知機能の発達段階を考慮し、学年による制限も設けられた。産経新聞の報道によれば、小学4年生以下については、デジタル部分をより限定した「おおむね紙」での構成が求められる。この年齢層において「完全デジタル」の教科書を採用することは認められない。
この方針は、以前から示されていた慎重な姿勢を反映したものだ。松本洋平氏が大臣在任中の2026年9月11日に行ったインタビュー(日経BP掲載)でも、小学4年生以下への完全デジタル教科書の導入には慎重な見解が示されていた。特に国語や社会、道徳などの教科については、学年を問わず当面は完全デジタルの導入を見送る方針が維持されている。
完全デジタルが認められる対象教科
完全デジタル形式が選択肢として認められるのは、小学5年生以上の一部教科に限定される。具体的には、英語や音楽、美術といった実技系教科などが対象だ。これらの教科では、デジタル教科書の特性を活かし、音声や動画を主軸にした学習が想定されている。
完全デジタルが容認される教科や学年においては、ハイブリッド形式を採用する場合であっても、紙よりもデジタルを主体とした構成が認められる可能性がある。ただし、デジタル教科書によって理解度を高めた後、ノートなどに手書きでまとめる活動を通して学習内容の定着を図るといった、手書きの重要性も指針案では強調されている。

教科書検定の新ルールと今後の導入スケジュール
教科書制作のルールとなる検定基準も、新たな教科書の全体像に合わせて整備が進んでいる。文部科学省が公表した新ルールでは、デジタル教科書に組み込まれる動画の長さは「1本3分程度まで」と設定された。また、教科ごとの特性に応じ、教科書1点20~90分を上限とする。
文部科学省の有識者会議で22日に示された指針の素案は、教科書制作や教育委員会などの採択の判断基準となるものであり、紙中心の学習環境を基本としつつデジタルを補助的・補完的に組み込むことや、小学4年生以下では完全デジタルを不可としてデジタル利用を限定すること、小学5年生以上は英語や音楽、美術といった実技系教科などに限って完全デジタルを容認すること、さらにノートなどに手書きでまとめる活動を通して学習内容の定着を図るといった手書きの活動の重要性を指針に盛り込んでいる。
今後、有識者会議での議論を経て若干の修正を加えた後、年内にも大臣指針が正式に決定される見通しだ。この指針は、次期学習指導要領が全面実施される2030年度以降に向けた、教科書会社による制作や教育委員会による採択の重要な判断基準となる。なお、紙媒体での学習が困難な児童生徒については、教科書バリアフリー法に基づき、引き続きデジタル版教科書の活用が図られる予定である。