香港の社交界で活躍し2023年に切断遺体で見つかった蔡天鳳(アビー・チョイ)さんの殺害事件をめぐり、殺人罪に問われた元夫とその家族の公判が30日に始まった。検察は法廷で、家族間の金銭トラブルが犯行の根本的な原因だったとの見解を示し、元夫の父親がマンションを巡る対立から犯行を企てたと指摘したと、CNN.co.jpなどが報じた。
香港セレブ殺害公判で元夫ら3人が無罪を主張
蔡天鳳さんの殺害を巡り公判にかけられているのは、元夫のアレックス・クォン被告と兄のアンソニー・クォン被告、そして父親のクォン・カウ被告の3人である。被告らは30日の初公判で、いずれも正式に無罪を主張した。事件は2023年2月に起え、国際金融都市である香港に大きな衝撃を与え、世界各地で大きく報じられた。警察は当時、見つかった遺体は一部だけだと発表しており、社交界で人気を集めていた被害者がなぜ残虐な形で命を奪われたのか、メディアの報道が過熱しSNS上でも臆測が飛び交う事態となった。
検察が指摘する金銭トラブルと経済格差
検察は冒頭陳述で、蔡さんと元夫の家族の間には相当な経済格差があったと指摘した。殺害当時、蔡さんはアレックス・クォン被告とすでに離婚しており、新たなパートナーは極めて裕福な家庭の出身だった。しかし、蔡さんは裕福ではなかったとされるクォン家との交流を続け、経済的な援助を行っていた。CNN.co.jpの報道によると、蔡さんは離婚後もクォン家に手厚い生活費を渡し続け、その中にはクォン・カウ被告名義の6000万香港ドル、現在のレートで約12億円相当のマンションも含まれていた。元夫との間に生まれた2人の子どもの世話を一家が手伝っていたことも、支援の理由とされている。

マンション売却計画を発端とした対立の激化
元警官であるクォン・カウ被告と蔡さんは一時は良好な間柄だったが、2022年に関係が悪化した。きっかけは、蔡さんが改装された豪華マンションを売却し、元夫の家族を子どもたちの通学に適した郊外へ転居させようとしたことだった。殺害までの数カ月間で対立は急速に深まり、クォン・カウ被告は蔡さんと絶縁する結果となり、一度など暴行を加えようとした疑いも持たれている。蔡さんの側でも怒りを募らせ、かつての義父を詐欺師や恩知らずと呼んでいたほか、クォン家が共謀して子どもたちが自分に反感を抱くよう仕向けるのではないかとの懸念も強まっていた。
計画的な犯行を示す検察の主張と遺体の発見
検察は、クォン・カウ被告が最終的に蔡さんの殺害を企てたと陪審に説明した。被告らは、蔡さんが死ねばマンションは自分名義のままで再び戻って暮らせると考えたとみられている。警察の以前の説明によると、4児の母親である蔡さんの行方が分からなくなったのは2023年2月21日だった。行方不明になった3日後、香港の大埔地区にある民家から蔡さんのものとみられる遺体の一部が見つかり、現場からはスライサーや電動のこぎり、衣類も発見された。クォン家の3人はその後まもなく逮捕され、今回の公判に至っている。
今後の司法判断と裁判の行方
男性8人、女性1人からなる陪審を前に始まった裁判では、被告側と検察側の主張の対立が鮮明になっている。30日の罪状認否で無罪を主張した元夫とその家族に対し、検察は金銭をめぐる執念が凄惨な犯行を引き起こした構図を立証していく方針である。社会的な関心を集め続けたこの大型事件の審理が、今後どのような司法判断へと結びつくのか、引き続き法廷の動向が注目される。