100万点のデータと行方不明の女性たち
事件の発端となったのは、フィラデルフィア州にある古びた赤茶色のレンガ造りの3階建て住宅だ。10月に入り、FBIとフィラデルフィア警察が周辺道路を封鎖し、家を解体しながら床や壁、排水施設などを徹底的に捜索している。大手紙国際部記者が伝えたところによると、この家から押収された膨大なデータは100万点を超える量にのぼる。多数の女性の写真や映像が含まれており、捜査当局はこれまでに映像に登場する50人以上を特定した。その中には行方不明となっていた7人の女性が含まれ、このうち5人はすでに死亡している可能性があるという。
「アーティスト」を名乗った男の正体
写真や映像の持ち主は、昨年82歳で死亡したレイモンド・ホーシュ氏である。ホーシュ氏は性的な女性の写真や映像を撮影する「アーティスト」と名乗り、長年ポルノ作品を制作していた。ホームページを運営して有料会員に作品を公開しており、その内容は拘束、暴力、死、薬物などをテーマにした性的なものだった。複数の米メディアによると、2018年に行方不明になっていた27歳の女性も作品に出演していた。その作品で女性は薬物を使用された後、カネを渡されて手錠でベッドに拘束され、首に結束バンドを巻かれて次第に意識を失っていく様子が記録されていた。演技なのか殺人なのか、100万点のデータには実際にホーシュ氏が殺人をしている可能性が高いものも含まれていたという。
息子の逮捕と「地下室の秘密」
事件が明るみに出たきっかけは、ホーシュ氏の息子であるユージーン・ホーシュ容疑者(44)の逮捕だった。今年6月、フィラデルフィア中心部で国立公園のレンジャーが不審なBMWを発見した。運転していたユージーン容疑者は同乗していた39歳の女性と揉めており、車内からはコカインなどの薬物や拳銃、偽造身分証などが発見された。決め手となったのは同乗女性の証言である。女性は2023年から行方不明となっていたブレア・トンゼリという別人の身分証を所持しており、ホーシュ氏のホームページにブレアさんの写真が掲載されていたことが判明した。さらに女性が「地下室が怖い」と話し、ユージーン容疑者がブレアさんについて「二度と姿を見せることはない」と語ったことから、今回の家宅捜索へと発展した。
解体される「恐怖の館」と証拠品の数々
米CBSによると、女性が恐れていた地下室はいくつもの小部屋に区切られており、捜査当局が「実験室」と表現する部屋が存在した。家からは100万点の画像や映像データのほか、撮影に使われたとみられる結束バンド、5つの骨壷、ドラム缶、腐食性のある化学物質などが発見されている。骨壷の持ち主は現時点で判明していないが、捜査当局が行方不明で死亡しているとみられる5人の女性と関係している可能性がある。10月5日以降、捜査当局は排水溝なども含めて行方不明者の痕跡を追っており、床を剥がし壁を取り除くなど家屋そのものの解体を続けている。ホーシュ氏が女性を殺害した後に遺体を溶かして証拠を隠滅していた疑いが持たれており、捜査当局は全容解明に向けた裏付けを急いでいる。