米労働省が8日に発表したデータによると、10月3日までの週の新規失業保険申請件数は19万7,000件となり、市場予想の20万件を下回りました。この水準は57年ぶりの低水準に近く、米国の労働市場が急速な悪化を避け、依然として安定的な状態を維持していることを示唆しています。
19万7,000件に留まった新規失業保険申請
この安定的な傾向について、ネイビー・フェデラル・クレジット・ユニオンのチーフエコノミストであるヘザー・ロング氏は次のように述べています。
「1960年代以来見られなかったような、持続的な非常に低い水準のレイオフ(一時解雇)が続いている」
ヘザー・ロング氏、ネイビー・フェデラル・クレジット・ユニオン チーフエコノミスト
また、週ごとの変動を平滑化する4週移動平均も前週の20万500件から19万8,000件へと低下しており、労働市場が短期的なノイズを超えて安定的な基調にあることを裏付けています。この数値は、2022年10月初旬以来の低い水準です。
継続受給者数と労働市場の「ロー・ハイヤー」構造
一方で、すでに失業保険を受給している人数を示す「継続受給者数」は、9月26日までの週に前週の改定値169万9,000件から1万7,000件増加し、171万6,000件となりました。ただし、継続受給者数の4週移動平均は172万3,000件から171万1,000件へと減少しており、 insured unemployment rate(被保険者失業率)は1.1%で横ばいを維持しています。

新規申請件数が低水準である一方で、求職者が新たな仕事を見つけるまでの期間は長期化する傾向にあります。9月の失業期間の中央値は11.5週に達しており、これは約4年半ぶりの高水準です。この現状について、トライベスト・ウェルスの投資マネージャー、マーティン・ペルティエ氏は、労働市場が単なる拡大局面にあるのではなく、採用も解雇も少ない「ロー・ハイヤー、ロー・ファイア」の状態にあると指摘しました。
「安定した解雇状況は、連邦準備制度理事会が物価の安定のみに注力することを許さない。インフレは目標を上回るリスクがあるが、弱い採用と長い失業期間は、雇用側に関するマンデート(責務)が依然として重要であることを意味している」 マーティン・ペルティエ氏、トライベスト・ウェルス 投資マネージャー
慎重な採用姿勢と外部環境の重圧
雇用主側がレイオフを抑制する一方で、積極的な増員にも慎重である背景には、高止まりするエネルギーコストや地政学的な不確実性があります。特にディーゼル価格が記録的な高水準にあることや、イランを巡る戦争リスクが企業経営の重荷となっています。

「企業は現在、様子見の期間にある。雇用主は高いエネルギーコスト、イランを巡る不確実な戦争、採用コストを押し上げる可能性のある利上げ、そしてヘルスケアコストの上昇といった課題に直面している」 アンディ・チャレンジャー氏、チャレンジャー・グレイ・アンド・クリスマス社
市場の反応と州別の動向
今回の労働市場データを受け、金融市場では米ドル指数(DXY)が102.30近辺で推移し、18カ月ぶりの高値圏を維持しています。また、金価格は労働市場データ発表後の取引において、1オンスあたり4,122.37ドルで取引され、日次チャートで0.27%の上昇を見せました。
州別の被保険者失業率(9月19日までの週)を見ると、ニュージャージー州が2.02%で最も高い水準を示しており、2%を超えた唯一の州となりました。一方で、サウスダコタ州(0.20%)、ルイジアナ州(0.30%)、フロリダ州(0.31%)などでは非常に低い失業率を記録しています。主要な州ではテキサス州が0.97%、カリフォルニア州が1.69%、ニューヨーク州が1.42%となっています。
今後の労働市場については、低水準のレイオフがいつまで維持されるのか、そして継続受給者数の推移が失業期間の長期化にどの程度影響を与えるかが、次期金融政策を左右する重要な指標となります。