10月1日、外国人の永住許可要件が厳格化され、各種申請手数料も大幅に値上げされた。日本国内の在留外国人数が400万人規模に迫る中、政府は社会秩序の維持を目的として審査基準を見直した。一方で、当事者からは制度への誤解や外国人というだけで一括りにされることへの戸惑いの声が上がっている。
10月の制度改定と申請現場の混雑
法務省によるガイドライン改定に伴い、永住許可の審査は従来より厳格な運用へと移行した。この変更を前に、9月中の駆け込み申請が相次ぎ、東京出入国在留管理局では朝から長い行列ができる事態となった。news.tv-asahi.co.jpによると、ロシア出身で声優や会社員として活動するジェーニャさんもその一人だ。来日21年で日本人の夫と娘を持つ彼女は、8時間かけて申請手続きを終えたという。今回の改定では、独立した生計を営む要件として「世帯年収が日本人世帯の平均収入以上(月収換算で約47万9000円)」であることが明記された。さらに、来年4月からは厚生年金への30年加入水準の年金受給見込み額が求められるなど、経済的な基準がより明確化されている。
外国人政策の転換と政府側の狙い
永住許可の厳格化について、政府とともに政策を進めてきた日本維新の会の三木圭恵衆院議員は、その背景を「技能実習から育成就労への制度変更や、特定技能2号の創設により、永住資格が容易に取れる状況になり、外国人の比率が上がりすぎてしまう」とABEMA TIMESに説明している。また、高市早苗総理が言及した国民の不安や不公平感については、経営管理ビザで家族を呼び寄せ、高額療養費などの社会保障制度を利用しているのではないかという懸念がSNS等を通じて広がったことが一因だと分析する。政府は、日本人が安心して生活できる秩序ある外国人政策の実現を強調している。

当事者が感じる制度への誤解と風当たり
制度改正の議論が進む中で、日本に住む外国人への視線は厳しさを増している。ジェーニャさんは「税金や健康保険、年金を払っていないという誤解が日本人の中にある」と指摘する。アメリカ出身のネルソン・バビンコイ氏も、ビザ更新には納税が不可欠であり、支払いが遅れれば更新に影響が出る実態を語った。SNS上では「国のルール下で生活すべき」といった批判も散見される。バビンコイ氏は、「名前ではなく『外国人』『外人』とひと括りにされ、リスペクトを欠いた言葉を向けられることに傷つく」と訴えている。小原ブラス氏も、帰化しても永住者であっても、日本で長く暮らす外国人が「死ぬまで外国人扱い」される社会の空気について懸念を示した。
年収要件の妥当性と専門家の指摘
新たな年収基準に対しては、専門家から疑問の声も上がっている。経済学者の柿埜真吾氏は、日本人世帯の平均収入を基準とすることについて「6割の日本人が満たせない条件を外国人に課すのはどうか」とABEMA TIMESで指摘した。また、NPO法人「移住者と連帯する全国ネットワーク」の共同代表理事・鳥井一平氏は、これまでも年収300万円から350万円程度の基準や、20項目に及ぶ税金チェックが存在していたとし、「今回なぜ引き上げが必要なのか、理由が示されていない」と反論している。リディラバ代表の安部敏樹氏も、日本人が担い手不足となっている介護や建設現場で働く外国人の多くが平均所得以下である現状に触れ、共生のあり方に課題を投げかけた。
治安懸念と今後の人口戦略
データと国民の体感治安の乖離も議論の焦点となっている。外国人による刑法犯検挙人数に著しい増加は見られないものの、調査では直近10年で「治安が悪くなった」と感じる人が約8割に達している。EXITの兼近大樹は、内情がわからない層が抱く不安を無視すべきではないとしつつも、相互理解のための教育プログラムや体制整備が必要だと語った。今年上半期には外国人起業数が前年同期比で約52%減少しており、厳格化が「選ばれぬ国」へのリスクとなる懸念も根強い。今後は、人口減少社会における外国人受け入れの適正規模と、共生のための社会的な合意形成がより強く求められることになる。