米国では失業率が4.2%と歴史的低水準にあるものの、有権者の経済評価は低迷している。物価高が賃金上昇分を相殺し、パンデミック後の活発な転職市場も沈静化したことが、国民の生活実感と統計上の堅調さとの乖離を招いているとロイターが報じた。
4.2%の失業率が示す米国経済の現状
米国では11月3日の中間選挙を控え、トランプ大統領と与党共和党が「失業率4.2%」という数字を掲げている。ロイターによると、この水準は多くのエコノミストが完全雇用と見なす指標であり、パンデミック後の急激な変動を除けば、2017年ごろから4.5%以下で推移してきた。第2次世界大戦後の復興期や1960年代の労働需給逼迫時に匹敵する堅調さだ。インフレが高止まりする中でも家計消費が底堅さを維持しているのは、人々に仕事があるという単純な事実が支えとなっている。
雇用市場の変質と労働力人口の課題
かつての好況期と現在では、雇用市場の性質が大きく異なる。ロイターの分析では、パンデミック直後の労働者は高い賃金を求めて転職する交渉力を持っていたが、現在はその状況が終了している。さらに、労働力人口の伸び悩みも経済の重石だ。高齢化や出生率の低下に加え、トランプ政権による移民取り締まり強化が影響を及ぼしている。就業中または求職中の総数は、2025年11月に記録した過去最高の1億7150万人には届いていない。

採用意欲の低下と若年層の就職難
企業による新規採用のペースは大幅に鈍化している。コンファレンスボードの調査では、「仕事を見つけるのは難しい」と答えた人の割合が、トランプ大統領1期目の最後となる2021年1月以来の高水準に達した。日テレNEWS NNNによると、若年層の苦境はより深刻だ。ニューヨーク連邦準備銀行が8月に発表した22歳から27歳の大卒者の失業率は5.6%で、全体の4.2%を上回る。SNS上では、多数の不採用通知を受け取り感覚が麻痺したと吐露する若者の声が散見される。
- 失業率:4.2%(全世代平均)
- 若年大卒者失業率:5.6%(22歳〜27歳)
- 労働力人口:過去最高(2025年11月)には依然として未達
- 消費者信頼感指数:12年ぶりの低水準
製造業雇用への政策効果の限界
トランプ氏は2024年の大統領選で、関税や規制緩和による製造業雇用の拡大を公約に掲げた。しかし、ロイターの指摘によれば、製造業の雇用者数は1979年のピーク以降、長期的には減少傾向にある。足元の雇用者数は1260万人にとどまり、トランプ氏が2025年1月に政権を引き継いだ時点と比べても約2万1000人少ない。積極的な関税政策が経済に混乱をもたらした可能性はあるものの、米国の雇用構造そのものを大きく変えるには至っていない。

実質賃金の伸び悩みと有権者の実感
多くの有権者が経済運営に厳しい評価を下す背景には、生活実感の乏しさがある。ロイターは、物価変動の影響を除いた実質可処分所得の伸び率が2%を下回る状況が続いていると報じた。自動化の進展や企業利益の優先などが賃金の伸びを抑制している可能性がある。日テレNEWS NNNの取材に応じた卒業生は、学生ローンの返済や医療費の負担に直面しており、現在の経済状況が改善されているようには見えないと語った。
中間選挙に向けた経済評価の行方
11月3日の中間選挙を前に、有権者はトランプ政権の過去2年の経済運営を厳しく査定することになる。若年層の間では、前回の選挙でトランプ氏に投票した層のうち31%が「後悔している」と回答した調査結果もあり、不満の高まりが浮き彫りとなっている。労働市場の数字上の堅調さと、物価高に苦しむ個人の生活実感との距離は埋まっていない。今後、この経済に対する懐疑的な視線が投票行動にどのような形で現れるのかが焦点となる。