政府は27日、大規模災害時の首都機能代替を目的とする「副首都」の指定要件を決定した。首都直下地震や富士山噴火と同時被災するリスクが低い地域を条件とし、現在は北海道、愛知、大阪、福岡の4道府県が候補となる。南海トラフ巨大地震への備えなど、要件の妥当性を巡る議論は今後も続く見通しだ。
副首都指定の要件と対象となる4道府県
政府は副首都構想関連法に基づき、災害リスクの観点から指定要件を定めた政令を決定した。主な除外対象は、首都直下地震の緊急対策区域と富士山の火山災害警戒地域である。これら首都圏と同時被災するリスクが高い地域を除外した結果、現時点で指定の可能性があるのは北海道、愛知、大阪、福岡の4道府県となっている。産経新聞の報道によると、政府は今後、有識者からの意見聴取を経て、来年10月をめどに副首都整備の基本方針を決定する方針だ。
南海トラフ巨大地震リスクへの懸念
指定要件から除外されていない南海トラフ巨大地震に対し、被災リスクへの懸念が根強く残っている。中央防災会議の想定では、南海トラフ巨大地震の被害は死者最大29万8000人、経済的被害は約292兆円と、首都直下地震(死者約1万8000人、経済被害約83兆円)を大きく上回る。日本維新の会の吉村洋文代表(大阪府知事)は27日の会見で「南海トラフ巨大地震では首都機能はまひしない。副首都は機能がまひした時の備えが肝だ」と述べ、現行の要件設定に理解を示した。
東京圏周辺自治体からの要望
副首都の指定要件に対しては、東京圏に近い自治体からも疑問や要望の声が上がっている。7月から8月にかけて実施された産経新聞のアンケートに対し、埼玉県は東日本の交通の要衝であることを挙げ、対象となり得ると主張した。群馬県の山本一太知事も19日、鈴木英敬総務副大臣に対し、東京からの近距離性を評価軸に加えるよう要望している。そもそも国内法には「首都」の定義や首都機能の具体的な中身が明文化されておらず、どのような機能を代替させるかが議論の焦点となっている。
経済副首都の役割と専門家の視点
副首都のあり方について、中央大学の佐々木信夫名誉教授(行政学)は、災害リスクの低さが最も重要であると指摘する。佐々木氏は、首都圏と同様に被災する可能性が高い地域では副首都としての意味を成さないと懸念を示した。また、副首都に経済圏形成の役割を持たせたことで、本来の目的が見えにくくなっていると指摘する。
- 首都直下地震:今後30年以内の発生確率70%程度
- 南海トラフ巨大地震:最大29万8000人の死者想定
- 候補地:北海道、愛知、大阪、福岡の4道府県
今後の議論の行方
首都機能のバックアップをいかに確保するかという問いに対し、政府は慎重な検討を進める姿勢を見せている。かつて平成11年に国会移転が議論された際には、栃木・福島地域や岐阜・愛知地域が候補に挙がった経緯がある。経済面での「副首都」を目指すのか、純粋な行政機能のバックアップを優先するのか、政府が定める基本方針の策定過程で、災害リスクと機能代替のバランスを巡る議論がさらに深まることは避けられない。