日本語版
最新ニュース
世界

ロシアの軍事財政を覆い隠す「7つのからくり」…「国防費」を大幅に増やしても戦費の実態が見えない理由

ロシア政府は9月30日、2027年から2029年までの3カ年を見据えた連邦予算案を下院に提出した。2027年の国防費は17兆1000億ルーブル(約32兆4900億円)に達する見込みで、これはウクライナ侵略開始以降で最大規模となる。WEDGE Onlineや読売新聞の報道によると、国防費は対GDP比で6.9%に相当し、現行の計画から大幅に増額された。 2027年予算案で膨らむ国防費の実態 ロシアの連邦予算は単年度ではなく、その後2年間の見通しを含めた3カ年計画として採択される。2027年の歳入は43.3兆ルーブル、歳出は48.8兆ルーブルに設定されており、5.5兆ルーブルの財政赤字が見込まれる。WEDGE Onlineによれば、この赤字額は同年のGDP見通しの2.2%に相当する。読売新聞は、国防費が2026年予算の12兆1210億ルーブルから41%増加し、当初計画比でも27%膨らむと報じた。プーチン政権による軍事支出の拡大は、侵略を継続する姿勢を色濃く反映している。 写真:読売新聞 機密扱いが拡大する国防予算の不透明性 ロシア国防費の全容を把握することは、公開情報だけでは極めて困難である。WEDGE Onlineの分析によれば、ロシア政府は国防費の使途を覆い隠すための「7つのからくり」を用いている。特に問題視されているのは、機密扱いとなる予算の割合の増大だ。2010年頃にはすでに国防費の半分近くが機密とされていたが、2022年のウクライナ全面侵攻以降、その傾向は加速した。2024年には約73%、2025年には約79%が機密扱いとなっており、今や国防費の約8割は「人件・糧食費」や「装備品購入費」といった大まかな分類すら示されていない。 財政を圧迫する軍事費と社会保障の削減 国防費の膨張は、国民生活を支える分野へ直接的な影響を及ぼしている。読売新聞によると、2027年の予算案では、社会保障、教育、保健といった分野で予算が当初計画と比べて6〜7%程度削減される見通しだ。ロシア政府は2027年のGDP成長率を1.4%増と見込んでいるが、財政状況の悪化は避けられない。2026年の財政赤字見通しはGDP比で3.2%に引き上げられ、債務残高も2027年には21.7%まで上昇すると予測されている。高金利政策による国債費の増大も、今後の財政運営における重い負担となっている。 写真:現代ビジネス 戦費の全体像は見えないまま ロシア当局が国防費の明細を秘匿し続ける中、ウクライナ侵攻の維持に実際にいくらの費用が投じられているのか、その全貌は不明なままである。軍事部門への支出が国民の福祉や教育を犠牲にしている事実は予算案から読み取れるものの、政府が軍事費として計上している数値以外に、どれだけの資金が戦費として流用されているのかは明らかではない。軍事支出の増大がロシアの財政と市民生活をどこまで追い詰めるのか、その帰結は依然として不透明なままである。

Wedge(ウェッジ)

ロシア政府は9月30日、2027年から2029年までの3カ年を見据えた連邦予算案を下院に提出した。2027年の国防費は17兆1000億ルーブル(約32兆4900億円)に達する見込みで、これはウクライナ侵略開始以降で最大規模となる。WEDGE Onlineや読売新聞の報道によると、国防費は対GDP比で6.9%に相当し、現行の計画から大幅に増額された。

2027年予算案で膨らむ国防費の実態

ロシアの連邦予算は単年度ではなく、その後2年間の見通しを含めた3カ年計画として採択される。2027年の歳入は43.3兆ルーブル、歳出は48.8兆ルーブルに設定されており、5.5兆ルーブルの財政赤字が見込まれる。WEDGE Onlineによれば、この赤字額は同年のGDP見通しの2.2%に相当する。読売新聞は、国防費が2026年予算の12兆1210億ルーブルから41%増加し、当初計画比でも27%膨らむと報じた。プーチン政権による軍事支出の拡大は、侵略を継続する姿勢を色濃く反映している。

ロシアの軍事財政を覆い隠す「7つのからくり」…「国防費」を大幅に増やしても戦費の実態が見えない理由
写真:読売新聞

機密扱いが拡大する国防予算の不透明性

ロシア国防費の全容を把握することは、公開情報だけでは極めて困難である。WEDGE Onlineの分析によれば、ロシア政府は国防費の使途を覆い隠すための「7つのからくり」を用いている。特に問題視されているのは、機密扱いとなる予算の割合の増大だ。2010年頃にはすでに国防費の半分近くが機密とされていたが、2022年のウクライナ全面侵攻以降、その傾向は加速した。2024年には約73%、2025年には約79%が機密扱いとなっており、今や国防費の約8割は「人件・糧食費」や「装備品購入費」といった大まかな分類すら示されていない。

財政を圧迫する軍事費と社会保障の削減

国防費の膨張は、国民生活を支える分野へ直接的な影響を及ぼしている。読売新聞によると、2027年の予算案では、社会保障、教育、保健といった分野で予算が当初計画と比べて6〜7%程度削減される見通しだ。ロシア政府は2027年のGDP成長率を1.4%増と見込んでいるが、財政状況の悪化は避けられない。2026年の財政赤字見通しはGDP比で3.2%に引き上げられ、債務残高も2027年には21.7%まで上昇すると予測されている。高金利政策による国債費の増大も、今後の財政運営における重い負担となっている。

by Gettyimages
写真:現代ビジネス

戦費の全体像は見えないまま

ロシア当局が国防費の明細を秘匿し続ける中、ウクライナ侵攻の維持に実際にいくらの費用が投じられているのか、その全貌は不明なままである。軍事部門への支出が国民の福祉や教育を犠牲にしている事実は予算案から読み取れるものの、政府が軍事費として計上している数値以外に、どれだけの資金が戦費として流用されているのかは明らかではない。軍事支出の増大がロシアの財政と市民生活をどこまで追い詰めるのか、その帰結は依然として不透明なままである。

執筆者について: nipponese

Nipponese News編集部は、国内外のニュースを日本語で分かりやすくお届けします。