ベージュ色のセーター姿で出廷したクランシー被告は表情をほとんど変えず、法廷には被告の両親や姉妹も同席していた。陪審員団からのメモを受け取ったウィリアム・サリヴァン判事は、弁護側と検察側をサイドバーに呼んで協議した後、陪審員らを再び法廷に呼び戻した。
ウィリアム・サリヴァン判事による指示と弁護人の発言
ウィリアム・サリヴァン判事は、今回の裁判が長期に及び、80人以上の証人と300点以上の証拠があったことを認めた上で、提示したすべての指示を念頭に置いて再び評議室に戻り、審議を継続するよう求めた。ウィリアム・サリヴァン判事、NBC News報道
サリヴァン判事は、5週間にわたる裁判で80人以上の証人尋問と300点を超える証拠が提出された長丁場であったことに言及しつつ、これまでの指示を思い出しながら再び評議室に戻るよう求めた。この指示に対し、検察側および弁護人を務めるケヴィン・レディングトン弁護士からの異議は申し立てられなかった。
ケヴィン・レディングトン弁護士の姿勢と陪審制度の法的背景
裁判の行方が注目される中、レディングトン弁護士は報道陣に対し、もし評決不能(評決不一致)となった場合には再び裁判に臨む姿勢を明確に示した。
レディングトン弁護士は、陪審員が評決不能となった場合に裁判をやり直すかについて問われた。レディングトン弁護士、NBC News報道
レディングトン弁護士は5週間の審理を通じて陪審員らが熱心に耳を傾けていたことから、メンバーに対して強い信頼を寄せていると語った。マサチューセッツ州法の下では、判事は陪審員団に対して審議の継続を促すことができるが、陪審員側の同意がない限り、それを2回以上行うことはできない。再び全員一致の評決に至らない場合、判事は審理無効(ミストライアル)を宣言することが可能となる。
また、元判事のジャック・ル氏はボストン・ヘラルド紙の取材に対し、膠着状態の表明について言及している。
It’s still early, speaks to the deeply emotional and controversial nature of this case. ジャック・ル氏(元判事)、ボストン・ヘラルド紙報道
裁判の争点とこれまでの経過
木曜日の午後に始まった審議において、陪審員団はこれまでにピルボトルや証拠品のナイフの確認を求める質問を一度行っていた。今回の膠着状態を伝えるメモには、「多数の時間の審議を経ても、我々は全員一致の決定に至ることができない」と記されており、法廷の傍聴者からは静かなどよめきが漏れた。

裁判の最大の争点は、クランシー被告が2023年1月に出産後精神病(ポストパートム・サイコシス)の状態にあり、自身の行動をコントロールできなかったか、あるいは計画的な犯行であったかという点にある。検察側は計画的な殺害を主張する一方、弁護側は精神病の症状により幻聴を聞いていたと主張し、刑事責任能力がないことを訴えている。陪審員団には、第一級殺人だけでなく、第二級殺人、過失致死、あるいは刑事責任能力なき無罪の選択肢も残されている。