南米ボリビアで、100年以上ぶりとなるネコ科の新種「ティルカヨ(Leopardus tilcayo)」が確認された。国際学術誌『カレント・バイオロジー』に9月17日付で発表された論文によると、遺伝子解析の結果、既存のタイガーキャットとは明確に異なる独立した種であることが判明した。
偶然の発見から始まった新種確認の道のり
今回の発見は、ある男性が森で拾った子ネコをイエネコだと思って連れ帰ったことに始まる。1年近く飼育したものの、その行動や外見が野生動物に近いと感じた飼い主が、ボリビアの野生生物保護施設に引き渡した。ボリビア・ネコ科動物研究プログラムの主任研究員パオラ・ノガレス・アスカランス氏は、このネコの独特な外見に好奇心をそそられた。鼻先は短く、耳は丸くて小さい。何より、全身を覆うヒョウのような斑点が特徴的だった。ノガレス・アスカランス氏は当初、この個体をノーザンタイガーキャットだと考えていたが、2019年にブラジルのガイドブックの写真と比較した際、斑点の大きさが明らかに異なることに気づき、調査を開始した。
遺伝子解析が明らかにした系統樹の真実
長年の調査を経て、研究チームは謎のネコのゲノムを正確に解読した。リオグランデ・ド・スル・カトリック大学のエドゥアルド・エイジリク氏らとの共同研究により、このネコが系統樹のどこに位置するかが突き止められた。論文では、地元での呼称に基づき「ティルカヨ」と命名された。朝鮮日報の報道によると、分析の結果、ティルカヨは約140万年前に他のタイガーキャット系統から枝分かれしたことが推定されている。この研究では、博物館の標本を含む南米各地のオセロット属38個体の全ゲノムを比較しており、ティルカヨが単なる亜種ではなく、独自の進化を遂げた別種であることが科学的に証明された。

複雑な地形が育んだアンデスの生物多様性
ティルカヨの生息地は、ボリビアのアンデス山脈東側斜面に広がるユンガス森林生態地域だ。この地域は山と谷が複雑に連なっており、動物の移動を阻む「自然の障壁」として機能してきた可能性がある。ノガレス・アスカランス氏は、これまで単一の種と考えられてきたタイガーキャットが、実は複数の種で構成されている可能性を指摘する。2013年には2種への分離が示唆され、2024年にはクラウドタイガーキャット(L. pardinoides)が独立種として認められた。今回の研究により、タイガーキャット系統は合計5種に整理されることとなる。これまで見落とされてきた小型ネコ科動物の多様性が、最新のゲノム科学によって次々と明らかになっている。
保護活動のあり方を変える種分類の重要性
新種の発見は、現実の自然保護活動に直接的な影響を及ぼす。これまで単一の種として広範囲に分布していると考えられていた場合、絶滅の危険度は低く見積もられがちだった。しかし、5つの種に細分化されることで、それぞれの個体数や生息域を個別に評価し直す必要が生じている。小型野生ネコ科動物保護財団のジェームズ・サンダーソン氏は、種数が増えることは保護活動の緊急性を高めることにつながると指摘する。朝鮮日報は、ユンガス地域における森林伐採や開発が新種の生存を脅かしている現状を伝え、原生林の保護と連結性の維持が急務であると報じている。
研究チームが期待する今後の広がり
ノガレス・アスカランス氏らは、今回のティルカヨの発見に用いた手法が、世界各地のネコ科動物の未知の多様性を解明する鍵になると期待している。サンダーソン氏は、同様の手法を適用することで、アフリカやアジアにおいても新たな小型ネコ科動物が発見される可能性は決して低くないと語る。研究チームは、今後もゲノム解析を軸とした分類学的研究を進め、マーゲイなど他のネコ科動物の分類見直しも視野に入れている。
- 学名:Leopardus tilcayo
- 主な生息地:ボリビア・ユンガス森林生態地域
- 推定分岐時期:約140万年前
- 関連する系統:タイガーキャット(オセロット属)
現時点で、ティルカヨの繁殖行動や食性といった詳細な日常の生態については、ほとんど解明されていない。ノガレス・アスカランス氏が「基本的なことを含め、わからないことだらけ」と語る通り、この新種の全容を解明するための実地調査や観察は、まさにこれから本格化する段階にある。