フィンランドのヘルシンキ大学の研究チームは、出産歴が女性の寿命に影響を与える可能性があると発表した。双子を対象とした調査では、生涯で2〜3人の子どもを出産した女性が最も長生きする傾向にあることが判明した。GIGAZINEが報じた。.
出産回数と生物学的老化の関連性
フィンランドの研究チームは、1957年以前に生まれた双子の女性を対象とした「フィンランド双生児コホート」のデータを分析した。研究では、被験者を子どもの数と出産時期に応じて7つのグループに分類し、死亡率と生物学的老化の指標を比較した。その結果、生涯で2〜3人の子どもを出産した女性が、最も長生きする傾向にあることが示された。一方で、4人以上を出産したケースでは寿命の短縮や生物学的老化の加速が確認されている。
エネルギー配分と「使い捨ての体理論」
この結果の背景には、生物学上の「使い捨ての体理論(Disposable soma theory)」が関わっている可能性がある。この理論は、生物が持つエネルギーや時間といった資源は有限であると説くものだ。生殖に多くのエネルギーを費やすと、DNAの修復や身体の維持に回せる資源が減少し、その結果として細胞損傷が増加し老化が早まるという考え方である。論文の筆頭著者であるヘルシンキ大学のミカエラ・フッカネン氏は、生殖に大量のエネルギーを投じることが身体の維持・修復能力を低下させ、寿命を縮める要因になり得ると指摘した。
出産しなかった女性に見られた傾向
今回の研究では、子どもを出産しなかった女性についても寿命が短く、生物学的老化が早いという結果が出ている。これは「生殖に使わない分、身体維持にエネルギーを回せるはずだ」という使い捨ての体理論の予測とは異なる側面がある。また、若い年齢での出産は老化の加速や寿命の短縮と関連していたが、アルコール摂取量やボディマス指数(BMI)といった他の要因を考慮に入れると、その差はほぼ消失した。
測定可能な生物学的痕跡の存在
研究チームは、採取した血液サンプルから1054人の生物学的老化の指標を算出した。共著者のミーナ・オリカイネン博士は、暦年齢よりも生物学的年齢が高い人は死亡リスクが高まると説明する。研究結果は、個人の人生における選択が、老齢期を迎えるよりもずっと前から身体に測定可能で永続的な生物学的痕跡を残していることを示唆している。
今回の研究でみられた関連性はあくまで集団レベルのものであり、因果関係を証明したわけでもないことから、女性はこの結果を受けて家族計画に修正を加えるべきではないと研究チームはアドバイスしています。
今回の研究結果は、人間の生物学的な老化プロセスが、過去の生殖履歴と密接に関係している可能性を浮き彫りにした。今後、この生物学的痕跡がどのようなメカニズムで長期的な健康に影響を及ぼすのか、さらなる検証が進められる見通しである。