バンス副大統領が求めるウラン濃縮の「意味のある削減」
米バンス副大統領は7日、ロイター通信の取材に対し、イランが戦争を終結させるための条件として「ウラン濃縮能力を意味のある形で削減させるべきだ」と述べた。トランプ政権はこれまで、イランによるウラン濃縮活動を全面的に否定し、一切の容認を拒む方針を貫いてきた。
この発言を受け、米CBSはトランプ政権がイランに対する要求を軟化させたと報じている。また、アルジャジーラも「米国は姿勢を軟化させようとしている」と分析した。強硬一辺倒だった従来の対イラン政策から、濃縮活動の「削減」を認めることで外交的な解決の糸口を探る方針へ転換した可能性がある。
ルビオ国務長官が強調するイランの「崩壊状態」
バンス氏の発言と同日、マルコ・ルビオ米国務長官も記者団に対し、イラン情勢について言及した。ルビオ氏は「イランが合意に至る機会を何度も失ってきた」と批判し、ホルムズ海峡の封鎖によって同国が「壊滅状態」に陥っていると強調した。
ルビオ氏ら政権内の主戦派は、イランに対して厳しい圧力をかけ続ける姿勢を崩していない。CNNは9月4日の報道で、政権が中東での戦闘を「過去のもの」として扱おうとしている一方で、閣僚間ではイランへの対応を巡り温度差があることを示唆していた。
政権内の慎重派と主戦派で割れる対イラン戦略
トランプ政権の主要閣僚の中でも、バンス氏は慎重派の立場をとる。ルビオ国務長官やヘグセス国防長官が中間選挙後の攻撃再開の可能性を示唆するのに対し、バンス氏は9月初旬、現状を「戦争と呼べない」と発言するなど、軍事的な介入には慎重な姿勢を見せてきた。
こうした背景には、MAGA(米国第一主義)支持者の繋ぎ止めや、2028年の次期大統領選を見据えた政治的計算があると指摘される。強硬派のトーンが衰えない中、バンス氏の穏健なアプローチが政権全体の共通認識として定着するかは不透明な情勢だ。
核合意に向けた交渉のハードルとイランの優先事項
たとえトランプ政権がウラン濃縮の「削減」という妥協案を提示したとしても、イラン側がこれに応じるかは不透明である。英ランカスター大学のサイモン・メイボン教授は、米国の姿勢軟化を指摘しつつも、イランの優先事項は核開発の制限よりも「ホルムズ海峡の再開」や「凍結された海外資産の解除」にあると分析する。
イラン首脳部からは、現時点でバンス氏のコメントに対する具体的な反応は示されていない。核合意の枠組みを巡り、米国とイラン双方が交渉の糸口を模索しているものの、実質的な合意に至る道のりは依然として遠い状況にある。
今後の交渉の行方
トランプ政権が「濃縮削減」を交渉の出発点とするのか、あるいは強硬派が主導権を握り再び軍事的圧力を強めるのか、その動向が今後の焦点となる。中東情勢を巡る米国の政策転換は、イラン側の応諾なしには進展が見込めない厳しい局面が続いている。