岸田光哉前社長の辞任と社長交代の背景
取締役会議長を務める佐久間総一郎社外取締役によると、6000億円を超える減損の一報に加え、財務報告に関する岸田光哉前社長の不適切な言動が取締役会に報告された。これを受け、9月25日に取締役会で対処が議論された。岸田氏が退席した後の再議論では、取締役全員が社長交代で一致したという。本人に伝えたところ辞意が表明され、29日に辞表が提出された。具体的な不適切な言動の内容について、南井正之代表取締役常務執行役員は、役員責任調査委員会が法的責任を含めて評価している段階であるとしてコメントを控えた。
佐久間氏は、岸田氏が役員責任調査委員会の調査対象であり、場合によっては法的責任を問われる可能性があると説明した。こうした緊急時に備え、会社側は8月から後継者の検討を進めてきた。非常に厳しい状況にある同社を再生できる人物として、丁寧に各所を検討した結果、取締役全員の判断で戒田氏を新社長に選んだとしている。戒田氏は70歳であり、職業人生50年の節目として、お世話になった会社への貢献を果たすために引き受けたと語った。
PwCジャパンによる監査意見不表明と今後の対応
監査を担当したPwCジャパン有限責任監査法人の久保田正崇代表執行役は、監査意見の不表明に至った理由について言及した。南井氏は、監査が停滞する要因をPwCから聞き、ぎりぎりまで意見をもらえるよう努力したが解決しきれなかったと述べた。不正会計に関与した人物を決算業務から外す予防的措置をとったものの、拠点があるいくつかの国で疑いがある複数の人の関与があったという。今後は速やかに監査に耐えうる状況を作っていく方針を示した。
監査意見不表明の理由に虚偽説明をした役員の存在が挙げられた点について、久保田氏は岸田氏が含まれていないと明言した。東京証券取引所に内部管理体制確認書を提出する期限である10月末までに監査意見をつけるか問われた久保田氏は、十分かつ適切な監査証拠を入手して監査意見を表明することが監査人の責任であると述べた。ニデック側が監査証拠を入手できるような体制を準備しており、期限に間に合うように努力していく姿勢を示した。また、過去の監査を検討し、そこでの学びを監査の品質向上に生かしていく考えを示している。
戒田新社長が掲げる経営方針と今後の計画
新社長に就任した戒田理夫氏は、技術で勝負できる会社にならなければいけないと強調した。グループ内で散らばっている技術を有機的に集める活動をすでに始めており、新しい市場や成長につなげる方針を掲げている。自身の立場については、有事のワンポイントリリーフではなく、3年から5年の計画を立てて実行することが自身のミッションであると語った。その上で、会社の価値を引き上げていく人物へ次の社長に引き継いでいく考えを示している。
ニデックは、役員責任調査委員会による調査の進展や、PwCジャパンによる監査手続きの再構築を進めながら、信頼回復に向けた経営体制の立て直しを急ぐ構えだ。10月末の期限に向けた監査意見の提示や、組織的な内部管理体制の立て直しが、今後の焦点となる。